ナスやタマネギの精巧なミニチュア、出荷箱に入ったハクサイや高級果実、エダマメのペンケース──。日本農業新聞の本社がある東京・秋葉原はガチャガチャ専門店が多数集まる。約100台をそろえる店を訪れると、うち10台は農業ガチャだった。価格は1回300~500円。インターネットで検索すると、他に少なくとも20シリーズ確認できた。
記者の疑問に答えてくれたのは、メーカーなどでつくる「日本カプセルトイ協会」の都築祐介代表だ。都築代表によると業界全体のターゲットが、子どもから、母親世代や金銭的に余裕のある独身女性ら30~40代の女性にシフト。農業ガチャもこの層に受けている。
なぜか。実は今、ガチャガチャは第5次ブーム中。コロナ禍で空いた大型商業施設に専門店が入り、30~40代の女性を含め、大人の目にも止まるようになった。市場規模は720億円。メーカーは急増し、新商品は月に約450シリーズも発売される。
都築代表によると、誰もが見たことのある農産物はこのトレンドと相性がいい。「野菜は色や形が特徴的。出荷箱の規格欄や包装資材など、細部までリアルを追求できる」のも魅力だ。アニメなどのキャラクターのフィギュアと組み合わせて楽しむ人もいるという。
JAが協力し、よりリアルさを追求するガチャもある。5種類のブランド果実をミニチュア化し、都内のメーカーが3月に発売。このうち山形県・JAやまがたのサクランボ「佐藤錦」はつやのある果実が整然と並び、JA名入りの化粧箱も忠実に再現した。同JAは「幅広い層にPRし認知度を上げたい」(総務課)と話す。
ブームを受け、独自の農業ガチャを町おこしに使う例もある。愛媛県ではミカンの引換券、島根県では農家のキャラクターシール入りのガチャが登場。シール持参で訪問すると景品がもらえる仕組みで、地元住民や観光客に注目されている。(高内杏奈)
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