働く人が自ら出資・運営する法人・労働者協同組合(労協)について、全国の24都道府県で59法人が設立されたことが、厚生労働省の調べ(10月13日現在)で分かった。手がける事業は弁当の配食から高齢者の送迎、草刈り、キャンプ場運営など多岐にわたる。労協法施行から10月で1年。協同労働という新しい働き方で、地域の課題解決に挑む動きが広がっている。
都道府県別で最も多いのは、東京、神奈川、兵庫で各7法人。北海道、三重の5法人と続く。地方別では関東18法人、近畿14法人となっている。
NPOや企業組合からの組織変更は9法人だった一方、新規設立は50法人と多かった。厚生労働省は、設立の簡便さに加え、兼業や副業、地域おこし、シニア世代の働きがいなど、労協が多様な働き方の受け皿になっているとみる。
島根県奥出雲町では3月、農家らが「労働者協同組合33(さんさん)」を立ち上げた。長期休み中の子どもへの弁当宅配や高齢者の送迎をしている。
弁当の米は、同組合代表の和久利健さん(63)が作る特産「仁多米」。夏休みは計10回、延べ200食を1食300円で届けた。
弁当の宅配は昨年、任意団体を立ち上げて無償で始めたが、「ボランティアだけだと本人たちが辞めると続かない」と考え、法人化を決めた。和久利さんは「労協は幅広い事業に挑戦できるのが魅力だった」と話す。
4月に設立された岐阜県東白川村の東白川村労働者協同組合は、茶畑の刈り取りや草刈りなど地域の困り事を請け負う。ITプログラマーで地域に移住した福田康弘さん(41)ら3人が副業として立ち上げた。作業料金は1時間1800円。これまで約10件の注文を受けた。
福田さんは「法人格があると依頼する側も安心できる」と労協の利点を説明する。将来はアルバイト雇用も視野に入れる。「今は町場まで通っている地域に住む学生のアルバイトの場を確保し、地域活性化につなげたい」と展望する。
<ことば>
労働者協同組合
昨年10月に施行された労協法が認める協同労働の法人。3人の発起で手軽に設立できる。NPOと異なり、労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能。出資額にかかわらず一人一票の議決権を持つため意見が反映されやすく、組合員は主体的に事業に関わる。