「干し柿作りをやめるかもしれない。(作業小屋を直しても)この年齢でいつまで続けられるか分からない」。地震で損傷を受けて傾いた作業小屋を見つめながら、同町の干し柿農家の男性(77)は肩を落とす。
能登志賀ころ柿は、鮮やかなあめ色で緻密な果肉が特徴の干し柿。手作業で果肉をほぐす「手もみ」など、伝統的な製法で作られる。同町を管内とするJA志賀ころ柿部会の部会員111人が生産し、2023年産の出荷量は22トンに上る。
作業小屋は、2階建てが一般的で、1階で選別や皮むきを行い、秋から冬にかけて2階で柿を干す。干し柿作りに特化した構造で、効率的な生産を可能にする。同JAによると、地震で少なくとも10~20戸の生産者の作業小屋が、倒壊したり揺れで傾いたりして、使えない状態だという。
同部会の吉野成明部会長は「被害が甚大な家や道路の再建が優先される中、作業小屋の復旧は来シーズンに間に合うだろうか」と危惧する。
能登志賀ころ柿は16年にGI登録された。生産者の高齢化で出荷量がピーク時の半分以下に落ち込む中、産地の再起を懸けた取り組みだった。登録後はブランド力が高まり、部会全体の販売額が1割増えるなど、着実に産地再興を進めていた。
そんな中での地震に、同JAの土田茂樹営農部長は「産地にとって相当な痛手だ。生産者は70代が中心。どれだけの生産者が続けられるのだろうか」と心配する。