ジビエ 無駄なく利用 加工施設広がる 新たな収入源に
センター事業は、多くの施設で廃棄される部位の有効利用が目的だ。日本ジビエ振興協会の藤木徳彦代表が考案し、19年に3施設で始まった。長野県富士見町で鹿の食肉処理や販売を手掛ける信州富士見高原ファームが拠点施設(センター)の役割を担う。協会の紹介で、大手ハンバーガーチェーンとの取引も実現した。
国産ジビエは品質や安全性が評価され、大口需要も出てきたが、鹿で利用できる部位は全体の3割。このうち利用しにくいスネ肉や肩肉が3分の1を占める。大手外食が求める数量を確保するには、未利用の部位を活用して供給力を高める必要があった。
センター事業によって21年1~7月の出荷量は6万3600食(2・4トン)に増加。提携する施設数も、当初の3カ所から21年8月時点で14カ所に広がっている。
信州富士見高原ファームの戸井口裕貴さん(40)は「大手外食で使われると消費者への普及が一気に進む。提携を広げて需要に応えていきたい」と意気込む。同ファームまでの送料を負担し、肉に骨が付いた状態でも加工を引き受ける。
鳥取県若桜町のわかさ29(にく)工房は、事業の開始当初から参加している。工房の河戸建樹さん(48)は「捕獲した鹿を無駄なく使いたいが、骨が入り組み筋の多い部位は在庫になりがちだった」と振り返る。提携を通じ、国産ジビエの知名度を底上げする効果を期待する。
国産ジビエ認証制度は、捕獲から出荷までの工程を追跡でき、衛生管理が徹底されているといった一定の基準を満たした施設に国が認証を与える。流通するジビエの安全性を高め、有利販売につなげることが目的だ。
野生鳥獣の食肉処理施設は19年度時点で全国に667カ所あるが、このうち認証取得施設は26カ所にとどまる(8月21日時点)。
日本ジビエ振興協会の藤木代表は「利用されにくかった部位が新たな収入源になる。認証取得のきっかけになれば」と期待を寄せる。