豪州向けイチゴ輸出解禁1年 検疫条件 対応に課題
固有の生態系を持つ同国は病害虫侵入への警戒感が強く、日本産のイチゴ生果実は長く輸出ができなかった。産地の要望を踏まえて同省は2016年10月から協議を開始。20年8月28日付で、条件付きで解禁となった。
オーストラリア向けに輸出するには生産・選果・梱包(こんぽう)施設の登録、ショウジョウバエなど病害虫の調査といった検疫条件を整える必要がある。同省によると、条件を満たして輸出したのは岐阜県だけで、21年2、3月に4回にわたって計65キロを輸出した。
だが、同省によると、現地の空港での植物検疫や食品安全検査、輸出先企業までの輸送などに想定以上の時間を要し、検査で半分近くが抜き取られたり、切られるなどした。購入したレストランからは、量の少なさに不満の声が出たという。
岐阜県は今季の試験的な輸出を足掛かりに、来季以降、輸出量を拡大させたい考えだ。一方、同省は他産地が輸出する際にも同様のトラブルが発生する可能性があると判断。解禁1年を前にした今月20日、同国の検疫制度を周知し、効率の良い輸出につなげてもらうためオンラインでセミナーを開いた。
セミナーには、生産者や物流業者など30人が参加。駐日オーストラリア大使館の担当者が、検疫の内容など、輸出に関する基本事項を説明した。梱包施設単位で一定量を検疫用に回すことから、大ロット輸出の必要性を強調したという。
同省は「日本産のイチゴは味や見た目がよく、レストランや高所得層向けにニーズがある」(国際地域課)と強調する。今後も産地や物流業者向けのセミナーなどで制度を周知する方針だ。