![※[シェア奪還]](https://www.agrinews.co.jp/media/2024/04/26/l/20240426_i6iaesdgq6vkwoq43mzg.jpg)
オレンジ果汁の輸入量は、主産国のブラジルでの不作などを理由に2021年に大幅に減少。その後も同国での大雨被害や病害により不作が長期化しており、世界的なオレンジ果汁不足となっている。
円安や、新型コロナウイルス禍の収束による業務需要の回復も重なり、価格は上昇傾向が続いている。財務省の貿易統計によると、24年(3月まで)の輸入オレンジ果汁の1リットル価格は、19年比で2倍の624円になった。
輸入原料価格の高騰の影響は深刻化し、国内飲料メーカーによる果汁100%オレンジジュース商品の販売休止が相次いでいる。各メーカーで販売再開の見通しは立っていない。
飲料メーカー ミカン活用商品の開発
輸入オレンジ果汁の確保が難しくなる中、国産かんきつ果汁を使う動きが出てきた。
セブン-イレブンは4月、国産ミカンと輸入オレンジ果汁を組み合わせた飲料「7プレミアム オレンジとみかん果汁100%」を従来商品の100%オレンジジュースから置き換える形で新発売した。セブン&アイ・ホールディングスは、原料価格高騰下でも「100%果汁にこだわるためにリニューアルした」と話す。
えひめ飲料(松山市)は4月、主力商品のポンジュースをリニューアル。従来品よりも国産みかん果汁の使用割合を増やした。同社は「2、3年前から原料の調達リスクの高まりも考えた上での商品開発を進めていた」と話す。
産地 加工向けの「安価」が課題
果汁の国産シェア奪還のチャンスで、国産果汁の増産が求められるが、原料の取引価格の安さや生産基盤の弱体化が障壁となっている。
愛媛県内のミカン農家によると、果汁向けミカンの取引価格は「生食向けの20分の1程度」という。非常に安価であることに加えて、生食向けを目指して生産する中、年によって作柄も異なることから「果汁など加工向けへの安定供給は難しい」(同)と指摘する。
国内かんきつ産地の関係者によると、輸入果汁高騰を受けてこれまで取引のなかったメーカーも含めて国産かんきつ果汁に対する問い合わせが増えているものの「農家数の減少や今後の干ばつなど異常気象の常態化を考えると、対応は難しい」という。別の産地関係者は、今後のかんきつの生産基盤強化と国産果汁の安定供給に向けて「適正価格での継続的な取引を各メーカーには求めたい」と訴える。
国産販売のチャンスに かんきつ果汁の生産・流通に詳しい東洋大学法学部川久保篤志教授の話
今後、海外での果汁原料の不作や円安の状況が改善したとしても、輸送や現地生産コストの上昇を考えると、輸入オレンジ果汁を従来のような安い価格で仕入れられるようになるとは考えにくい。オレンジジュースは日常消費のものから、従来品よりも価格が高い健康飲料やぜいたく品として消費されるものに変化していくだろう。
安価な輸入果汁を使ったオレンジジュースの減少は、国産かんきつジュースを価格は高いが高品質な嗜好(しこう)品として売り出していくチャンスといえる。付加価値を高めながら商品の販売単価を上げることは、果汁原料の取引価格の向上につながり、国産かんきつジュース増産の課題である原料の確保難の解決、農家の所得向上が期待できる。