今夏の猛暑の影響が、梨の晩生品種で表面化している。千葉県では「新高」で日焼け果が広がるなどした他、栃木県では「にっこり」で果皮が変色したり果肉が柔らかくなったりする「煮え果」が発生し、出荷量を大きく落とす産地もある。生産資材を活用し、高温の影響を回避しようという研究が進む一方、品種や作物の転換に踏み出す動きもある。
「2年連続で被害が発生し、諦めて成木を切った人も多い。将来的に『新高』が希少品種になってしまうのではないか」。千葉県・JAいちかわの担当者は危機感を示す。
同県は梨生産量全国一で「新高」は晩生の主力。JA管内の市川市では約200戸が梨を生産するが、同品種の出荷量が例年の2、3割にとどまった生産者が多数いるという。
県によると同品種は今年、果皮が黒く変色して傷む日焼け果が目立つ。酷暑となる中、着果から収穫までに日が当たる時間が長いことが響いたとみられる。JAによると、早生の「幸水」や中生の「豊水」などに転換する動きがあるという。
梨出荷量が千葉県に次ぐ茨城県でも「新高」で果肉の一部が半透明の水浸状となる「蜜症」の発生が増えた。県は収穫間近の高温の影響が大きいとみており、果肉障害が出にくいとされる「甘太」への転換を促す。
全国3位の栃木県でも、県育成の晩生品種「にっこり」で果皮が変色して水浸状になる「煮え果」が目立ったという。同品種を44人が11ヘクタールで栽培するJAなすの梨部会も、煮え果発生などで出荷玉数が昨年より1、2割下がった。県は、かんきつ用の通気性の高い合成繊維素材の袋をかぶせて高温の影響を抑える試験に着手。県は「にっこりは県の代表品種。安定生産につながる技術を確立し、生産意欲を維持したい」とする。
東京都でも、農業振興事務所によると「新高」の収量が全体的に落ちている。稲城市の果樹農家・馬場芳則さん(67)は、煮え果多発などで2年連続で7割以上を廃棄。「今後も暑さが和らぐとは思えない」と、同品種は数本を残しレモンなどに転換する予定だという。
(志水隆治、南徳絵)