AIで乳牛健康診断 生乳成分基に4段階 飼養改善へ近畿生乳販連
生乳に含まれる成分は、乳牛の健康状態に応じ変化する。ただ、最近まで効率的な分析技術が確立されていなかった。
今回始めたサービスでは、乳中脂肪酸の分析データに加え、分娩(ぶんべん)回数や分娩後日数といった個体情報を踏まえ、AIが乳牛の健康状態を診断する。AI診断システムは、近畿生乳販連と兵庫県立農林水産技術総合センター淡路農業技術センターが共同開発した。
診断結果は、①廃用や繁殖障害に注意②飼料の摂取不足に注意③搾乳を中断する「乾乳」前なので、飼料の与え過ぎに注意④正常――の4種類。「正常」以外の要注意の乳牛の割合が40%以上を占める農家には、獣医師などへの相談を進言する。
同サービスは近畿6府県で利用できる。乳牛の定期健診とも呼ばれる「乳用牛群検定」を利用する農家の場合、月に1度の検定に合わせて生乳を採取し分析する。費用はかからない。それ以外の農家は希望に応じ、有料で受けられる。
近畿生乳販連は2019年、1頭ごとに乳中脂肪酸を分析し、農家に提供する取り組みに全国で初めて乗り出した。ただ、この仕組みでは、各脂肪酸の値が正常か分かっても、総合すると乳牛がどういう状態か分からないとの声もあったという。
同センターの生田健太郎畜産部長は「AI診断で、乳牛の健康状態を端的に把握できるようになった。診断に従って飼養改善に取り組めば、農場全体で生乳生産量を2、3割向上させることも期待できる」と話す。