製糖苦境、コロナ追い打ち 消費低迷で工場閉鎖や在庫過剰
農水省によると、砂糖の原料糖の供給は輸入が約100万トン、国産が約80万トン。国内での砂糖(白砂糖などの分蜜糖)の消費量は過去10年減り続けている。2020年9月までの1年間の消費量は172万トン。10年前に比べ30万トン減った。コロナ禍で土産物需要などが落ち込んだため、前年に比べ11万トンと減少幅が大きい。
農水省は「もともと砂糖の消費が減っている中、ここ2年で急激に厳しい状況になっている」と説明する。
黒糖も在庫が膨らむ。サトウキビの産地、沖縄では、流通分と離島にある八つの工場分合わせた在庫が過去最大の1万6000トン。2年分の生産量に匹敵する規模で、JAおきなわ特命プロジェクト推進室の白坂進一室長は「小さな離島にある黒糖の製糖所は島の存続にも関わる。在庫が積み上がり、中長期的な操業が見通せない」と話す。
テンサイの産地、北海道では、半世紀近く3者が8製糖所を運営してきたが、本別町にある本別製糖所が23年で砂糖の生産を終了することになった。運営する北海道糖業は、道内の別工場などでテンサイを受け入れ、営農への影響は最小限にとどめる方針だ。地元のJA本別町の佐野政利組合長は「地域の誇り、拠点のような製糖所。残念だが、苦渋の経営判断を尊重しなければならないという思いもある」と明かす。
製糖は農業だけでなく、関連産業の裾野が広い。特にサトウキビやテンサイは離島や気象環境が厳しい土地でも栽培できる品目として、地域に欠かせない存在だ。JAや製糖所は、情報発信や新たな需要開拓などを進めており、今後も需要喚起策を強化していく。