放任果樹伐採で猿被害10分の1 集落挙げ調査、無償で撤去 山形・米沢市山上地区
同地区は、福島県との県境の中山間地域にある。1993年ごろから猿がナスやキュウリなどの農産物を荒らし、被害額は2015年度には約113万円に上った。だが、庭先や畑周辺で管理されていなかった約450本の柿や栗などの木を伐採し、20年度には45本にまで減らした。並行して電気柵の設置を進めたところ、20年度の被害額は約9万円となった。
きっかけは13年。同地区有害鳥獣対策協議会の我彦正福会長が、放任状態にあった自宅周辺の柿の木を伐採すると、猿を見かけなくなった。「餌場をなくすことが鍵だと気付いた」(我彦会長)。これ以前も花火による追い払いなど対策を模索していたが、効果は一時的だったという。
協議会は15年度、同地区の15集落・約700世帯全てに放任果樹の有無を調査。結果に基づいて伐採は17年度に始め、18年度以降は年間100本超の伐採が続いた。作業は地域住民を中心に行い、危険な作業の一部は地元の林業関係者に委託した。重機の稼働費用は県の事業を活用し、依頼者の負担はない。
我彦会長は「被害が減ったと口コミで広がり、拒んでいた人も『周りが切るなら』と言うようになった」と振り返る。地権者が地区内にいない場合は、近隣住民が遠方に住む親族に連絡を取り、許可を得たという。
21年度は30本を伐採予定で、対策はひと区切りを迎える。同地区の鈴木市子さん(73)は、両親が住んでいた家の周辺にある栗の木約10本を来年3月に伐採予定。「家を継ぐ人もおらず、猿や熊の餌になるだけで近所の迷惑になってしまうと思っていた」と話す。