日本品種の独占栽培団体が監視 「防衛的許諾」普及後押し 農水省
海外の違法例発見へ
同省は防衛的許諾に取り組む品種開発者向けに、契約締結に必要な費用の3分の2の助成を始める。2021年度補正予算で3億3900万円、22年度当初予算案で1億7700万円を計上した「植物品種等海外流出防止総合対策・推進事業」の中で支援する。
日本で開発された品種を、海外で無断栽培などの取り締まり対象とするには、現地でも品種登録が必要。同省は海外での登録出願を支援し、21年9月末時点で117品種が登録された。だが、実際に無断栽培など権利侵害があるかどうかは、開発者自身が現地で定期的に調べることが必要。栽培差し止めや賠償請求も見据え、現地の弁護士に監視を依頼することもできるが、多額の費用がかかる。
同省は防衛的許諾によって「現場を熟知する生産者団体の情報網で、違法事例が発見しやすくなる」(種苗室)とし、開発者の監視コスト低減につながるとみる。現地の生産者団体は品種開発者への許諾料を支払うことで、当該品種を国内で競合なく販売が可能となる。同省は「日本のブランド力の高い農産物を独占販売できる利益を守ろうと、監視にも力を入れるはずだ」(同)とする。
品種開発者が生産者団体と結ぶ、日本からの当該品種の輸出を妨げない契約については、生産者団体が品種を販売・流通させる時期を、日本産の輸出時期と重複しない期間とするといった内容も想定される。こうした契約を結べば、日本からの輸出品と現地の生産者団体の栽培品とを組み合わせた周年供給が可能になり、日本産農産物の市場拡大にも貢献できるとみる。