サクランボ出荷できず 山形、品質低下で2週早く切り上げ
幅2メートル、深さ1メートルの穴にぎっしりと詰まったサクランボ。「黒ずんで、しわが寄っている。悲惨な結果に終わった」。山形県寒河江市のサクランボ農家、秋場尚弘さん(68)はつぶやいた。
大粒で皮がパリッとした食感の晩生品種「紅秀峰」は、県主力「佐藤錦」に次ぐ生産量。例年、6月20日~7月15日ごろまで収穫が続く。今年は6月下旬には過熟が見られ、皮も実も柔らかくなり、出荷基準を満たさないものが急増した。
秋場さんの園地も、例年パート従業員約10人が収穫・箱詰めする時期だが、4日には作業が終わった。
加工用にも回したが、急に人手を増やすこともできず、全てはさばけなかった。例年「紅秀峰」を2トン生産するが、その3、4割は廃棄だという。
秋場さんは「JAや生産者で決める収穫開始日の見極め方を見直す必要がある」と指摘。ポスターなどで早めの収穫を呼びかけたJAさがえ西村山の営農指導課は「来シーズン以降の暑さ対策を協議していきたい」と話した。
日焼け対策急ぐ
福島県のJAふくしま未来は猛暑の影響で、リンゴや桃などで日焼けや、生育が止まっていることを確認した。JAは例年7月中旬に、リンゴの日焼け防止として葉面散布剤の使用を指導するが、前倒しして散布。桃の日焼け防止策では、着色促進資材に使う反射マルチを従来の銀色から白色に替えた。JA園芸課は「天候が安定せず、引き続き暑さ対策が必要。生産者に呼びかけていく」と警戒を強める。
九州では短い梅雨で日照が多く、露地作のピーマン産地の一部で日焼け発生率が高まっている。鹿児島では葉枯れによるカボチャの日焼けが報告されており、「20日ごろまで出荷が続く産地もあるので心配だ」(JA鹿児島県経済連)と話す。関東の産地でも、一部でカボチャや果実の日焼け、野菜や花の葉の黄化が見られる。
猛暑は4日以降いったん和らいだが、気象庁は再び暑くなると見通す。7日に発表した1カ月予報では、北日本、東日本、西日本、沖縄・奄美のいずれも平年に比べ気温がかなり高くなるとして、注意を呼びかける。
野菜相場は、猛暑による影響で乱高下している。7月に入って葉物は高温で入荷が減り、相場が急伸。ホウレンソウは主要卸の1キロ価格が1週間で3割上昇した。ネギやキャベツも販売不振だった6月末に急落していた相場が反発し、上げた。
7日のホウレンソウの日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、1キロ592円。平年(過去5年平均)の1割安だった1週間前から急伸し、同2割高を付ける。
卸売会社は「各地で高温障害や傷みが増えた」と話す。JA全農ぐんまによると、6月下旬に40トンだった1日の出荷量は7月に入り25トン程度に減少。「遅れていた平場産地が6月下旬に増量した分、減少幅が大きい」
京浜市場は今後高冷地主体の入荷となる。「品質は回復するが数量は減少に向かう」(卸売会社)とし、堅調相場を見通す。
ネギも高温で肥大が抑えられ、入荷減少。猛暑による販売不振で平年の2割安だった月末から価格を戻し、7日は1キロ353円と同1割安だった。キャベツも先行産地が終了し、相場を戻した。今後、結球類は高冷地の適度な雨と気温上昇で増量ペースが加速。荷余り感が強まり、相場は下落が見込まれる。
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