[論説]骨太方針が閣議決定 食料安保の具体化急げ
「依存からの脱却」。政府は骨太の方針の主要テーマに掲げた。新型コロナの感染法上の位置付けが「5類」に移行し、行動制限が緩和された現状を踏まえ、これまで膨らみ過ぎた歳出を正常に戻すことが念頭にある。コロナ関連対策に巨額の財源を投じたことで国の財政は極度に悪化、国債発行残高は1000兆円を超え、借金依存から抜け出すための経済再生と財政の健全化は待ったなしの情勢だ。
農業をはじめ、地方の主要産業に与えたコロナの影響に、ウクライナ危機が重なって生産資材や食品などの価格高騰が長期化し、経営や農村の暮らしを圧迫する。
政府は今後、コロナ対策にかかる地方自治体への交付金を検証し、見直す方針だが、経済が回復途上にある中で国費の歳出を減らせば、地方の財政基盤は弱まり、都市との格差は一層、拡大する。見直しに当たっては慎重を期すべきである。
「依存からの脱却」は食料にも及ぶ。食料・農業・農村基本法の改正に向け、政府がまとめた「新たな展開方向」を踏まえ、骨太の方針には輸入依存度の高い食料・生産資材の国内生産力の拡大を挙げた。不測時に政府一体で食料を確保する仕組みの検討、生産性向上へスマート農業の実装加速化なども盛り込んだ。
ウクライナ危機以降、特に肥料は調達面での課題が露呈した。相場は一時の騰勢から落ち着いてきているものの、有事に備えた対応が急務だ。12日の参院決算委員会で、岸田文雄首相は「化学肥料の低減や国内資源の肥料利用の拡大は、効率的にこれからも進めていく」と表明。環境に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換を着実に進める認識を示した。
資材コストが農業経営に重くのしかかる中、適正な価格形成の早期実現も急務だ。JAグループは仕組みの確立を強く求めており、政府は実現を主導すべきだ。
物流改革にも言及した。トラック運転手の労働時間規制が厳格化する「2024年問題」について、規制的措置の導入による商慣行の見直しなど、抜本的な対策を行う。物流再編は産地の命運が懸かる大問題で、円滑な国内調達を妨げる一因となりかねない。
酪農を中心に離農が相次ぎ経営は厳しい。依存から脱却し持続可能な農業へ、施策の早急な具体化を求めたい。