[論説]猛威振るう異常気象 「常態化」に備え命を守れ
世界気象機関(WMO)のペテリ・ターラス事務総長は3日、「異常気象が人間の健康、生態系、経済、農業、エネルギー、水供給に多大な影響を与えている」との声明を出し、これを「新しい日常」と呼んだ。国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉事務局長も「世界的な食料不安の主因は新しい日常にある」とし、「異常気象や紛争」などの常態化に懸念を示した。
食料不安の背景には、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象の発生で、温暖化が加速していることがある。WMOは常識を超えた“スーパーエルニーニョ”の影響は5年続くと見通す。
世界の7月の気温は産業革命以降、最高となった。地中海沿岸諸国では山火事が相次ぎ、カナダでも北極圏まで燃え広がった。米国アリゾナ州では記録的猛暑でサボテンが枯れ、フロリダ州では海洋熱波で多くが救急搬送された。
アジアでは中国、インド、韓国で大雨による洪水で、死者が相次いだ。日本も7月は九州や東北で豪雨が続き、農業被害が深刻化した。北海道・東北は3月から7月にかけて月平均気温が平年を最大3・4度上回り、5月を除いて観測史上最高を記録。熱中症警戒アラートの発出数も過去最多ペースだ。命を最優先にした行動が求められる。
台風も想定外の動きを見せている。沖縄の西方でV字転換して東へ進んでいた6号は7日、今度は北西へ転換し、九州に接近中だ。エルニーニョの影響などで今年は台風の発生数が例年より多くなる見込み。気象庁は「今年の台風は東寄りに進む傾向にある」として、暴風雨に厳重警戒を呼びかけている。
異常気象は食料危機に直結する。世界食糧計画(WFP)は7月、世界人口の約3割に及ぶ24億人が「食料へのアクセスを失っている」と指摘。気候変動と紛争が食料高騰につながり、このままでは「2030年までに飢餓をゼロにする持続可能な開発目標は達成されない」と警告した。
「世界で起きている自然災害は地球への災害。温暖化を招いた人間の責任だ」とアントニオ・グテーレス国連事務総長。人間が招いた気候危機が災害となって人間に向かう。まずは命を守り、持続可能な地球をどう取り戻すかが問われている。