[論説]世界食料デー 食品ロスから見直そう
「世界食料デー」は、国連が定めた世界の食料問題を考える日。「8億人待ち」の広告は、「多くの人が明日を生き延びるために食べ物を待っていることを知ってほしい」と国連WFP協会を支援するため、ACジャパンが制作した。
飢餓人口は、世界人口の1割を超え、近年のコロナ禍に加えてウクライナ情勢などの影響で増え続けている。飢餓は見えにくいが、私たちの暮らしとつながっている。まずは現状を知ることが大切だ。
そもそも、世界の食料は足りている。主食となる穀物の生産量は世界全体で約28億トン。在庫もあるので世界の人が十分食べられる量はある。
なぜ足りないのか。要因の一つが、食品ロスだ。世界の食料廃棄量は年間約13億トンと、食料全体の約3分の1を占める。食べられるのに捨てられる量は国内で年間523万トン(2021年度)。国民1人が毎日、茶わん1杯分の食料を捨てている計算になる。
多くは可燃ごみとして処理されるため、燃やすことで二酸化炭素(CO2)が発生し、それが温暖化を進め、異常気象につながり、農業生産を不安定にし、飢餓を招く負のサイクルとなる。一人一人の行動を見直すことが、世界の人たちや生き物たちの命を守ることになる。
食料が手に入りにくい原因は、食品ロス以外にも貧困による格差の拡大、食料品の高騰、交通インフラの未整備などさまざまだ。日本でもひとり親世帯など生活困窮者や買い物弱者が増えている。各地で広がる子ども食堂やフードバンク活動などに対する一層の支援も必要だ。
50年の世界人口は、20億人増えて推計97億人。政府は、食料・農業・農村基本法見直しの指針となる「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」で、「食料がいつでも安価で輸入できる状況が続くわけではない」とし、「食料安全保障を抜本的に強化するための政策を確立する」とうたった。だが、具体策について懸念がある。
食料備蓄の在り方については、農水省は財政負担の面から、備蓄米水準の引き下げを示唆しているが、明らかに展開方向と食い違っている。気候変動や国際紛争などリスクの高まりを考えれば、これまで以上に国内生産を重視し、備蓄を手厚くするのが食料安保の基本であるはずだ。