[論説]ローカル鉄道の行方 貨客混載を維持の一手に
10月1日の改正地域公共交通活性化再生法施行を受け、経営難の鉄道の存続を検討する「再構築協議会」制度が発足した。当面の設置目安は、1キロ当たり1日の乗客数を示す「輸送密度」が1000人未満の線区だ。JR線全体の2割強が該当する。
こうした路線は中山間地域に多く、通学や買い物、通院に、学生や高齢者の貴重な移動手段になっている。JR各社が協議会設置の意向を示し、協議が始まれば3年ほどで方針は決まるだけに、地域住民は不安を募らせている。
設置要請第1号は、JR西日本が求めた広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間で、対象自治体は岡山県と新見市、広島県と庄原市。国からの協議会への参加要請に、各自治体は回答を延長している。廃止につながることを警戒してだろう。ただ両県知事は協議会が設置されても鉄道の果たす役割を国に訴え、存続支援を求めていく考えだ。
中国四国知事会も、自県の路線が検討対象になることへの警戒を強めている。協議会の議論は、廃止を前提にしたものであってはならない。地域の実態を踏まえ、新たな交通弱者を生まないように徹底した議論を望みたい。
ローカル線は利用客が減る一方だが、米など農産物を一度に大量に送ることができ、二酸化炭素の排出量削減にも貢献できる鉄道貨物の利用が見直されている。
JA全農と全農物流、JR貨物が11月から車両を丸ごと貸し切り、米などを長距離輸送する貨物列車「全農号」の定期運行も始めた。今年度中は月2回、来年度は月に最大4回運行予定。1回で10トントラック50台分輸送ができる。
トラックの運転手不足や労働時間規制も踏まえ、2024年問題が待ったなしだ。貨客混載なども進めて、物流危機の一助になる鉄道利用の取り組みを広げられないか。
コスト削減へ、災害復旧時の只見線での、福島県と沿線自治体が施設や土地を保有し列車の運行はJR東日本が行う「上下分離方式」の例もある。地域が望む鉄道網維持に、関係者はさらに知恵を絞るべきだ。地域住民の積極的な利用も重要だ。
少子高齢化が進む中山間地の住民に、公共交通の鉄道網は欠かせない。廃線や交通の利便性が損なわれると、過疎化を加速する。国も公共交通の意義と役割を再認識し、支援することが必要だ。