[論説]ふるさと納税の返礼品 適正表示へ監視強めよ
インターネット上には数多くのふるさと納税を取り扱うサイトがある。総務省によると2022年は全国で約5184万件、約9654億円のふるさと納税があった。
23年に「(ふるさと納税を)利用した」「これから利用する予定」と答えた人は、全体の4割に上る。特に若い世代で関心が高く、返礼品の人気は「肉」が最も高いという調査結果もある。鹿児島県鹿屋市では9月、1500万円の寄付額に対し、鹿児島黒牛1頭丸ごと総重量約300キロ(内臓肉除く)という破格の返礼品も登場した。
そうした中、少なくとも22年4~12月に販売された佐賀県上峰町の「佐賀産和牛」約21トン、長崎県諫早市の「ながさき和牛」約16トンで、表示とは違う国産和牛を使っていたことが明るみに出た。
取り扱っていた食肉卸のタツミ商事(福岡県久留米市)は、九州農政局に「仕入れが追い付かなかった。納品できなければ今後の発注を切られると思った」と説明。食肉加工・販売のヒムカ食品(熊本県錦町)は宮崎県都城市に工場があるため、県産鶏肉として同市が返礼品として採用した。だが、22年10月からの半年間で販売した約144トンは、ブラジル産やタイ産だった。同農政局には「鳥インフルエンザなどで原料が高騰したため」と答えたが、産地の信頼を失墜しかねない行為だ。行政には、徹底した原因究明と再発防止策を求めたい。
問われるのは、返礼品を扱う業者が取り扱う品目表示が、適切かどうかのチェック体制だ。自治体が、業者に対し産地を証明する書類の提出を求めるのは、返礼品採用時の1回だけというケースが多い。産地偽装が行われていないか、定期的に産地証明の提出を取扱業者に求めることなどが必要となろう。
10月には、ふるさと納税に新たなルールが適用された。送料や広告費、事務費などを含めて寄付金の50%以下に抑える必要がある。これに対しインターネット上では、9月末までに“駆け込み納税”を促すようなPRも見られた。
年末に向け、ふるさと納税の申し込みが増える時期となる。取扱業者に注文が殺到して、仕入れが追い付かず、産地偽装を招くことがあってはならない。応援したい自治体からの返礼品の信頼を確保することは、生産する農家と産地を守ることにつながる。