[論説]JAグループ畜酪提案 価格と対策 両輪支援を
政策提案で柱に掲げたのが、再生産に配慮した適正な価格形成だ。農水省は法制化に向けた仕組みの具体化へ、飲用牛乳などで議論を始めており、適正価格の実現に向けた試金石となる。
農家所得の確保は、経営安定対策だけでなく、適正な価格形成が欠かせない。これまで配合飼料の高騰は、価格安定制度による補填(ほてん)でカバーしてきた。だが、飼料の高止まりが長期化することで仕組み上、補填額は徐々に目減りする。高止まりするコストを適正に価格転嫁できていれば、農家所得は確保できるが、実態はそうなっていない。酪農家を中心に離農は相次ぎ、コスト増に現場は苦しんでいる。
配合飼料高騰に対し、農水省が設けた特例補填も年内が期限だ。政府は価格形成の仕組みの具体化を急ぎつつ、飼料高騰の影響緩和策をどう再構築するかも問われている。
24年度の畜産・酪農対策は12月中旬に決まる。焦点となる加工原料乳生産者補給金の単価は、生産コストの上昇を十分に踏まえた上で設定すべきだ。離農や猛暑などで生乳生産量は減り、この先、乳製品を安定供給できるかは実に危うい。総交付対象数量は21、22年度の2年連続で超過している。農家が希望を持って再生産できる対象数量を確保し、生産基盤を維持できる所得水準につなげるべきだ。
さらにトラックドライバー不足が懸念される「物流24年問題」を受け、集送乳調整金の単価は、輸送環境の厳しさを十分に考慮する必要がある。条件不利地であっても集乳を続ける意義は、生産基盤の維持だけでなく地域を支えることにつながる。
畜産経営安定法の運用改善も求めたい。指定生乳生産者団体(指定団体)以外への出荷を容易にした改正法の施行後、生産を抑制し需給調整に取り組む出荷者と、それ以外の農家との不公平感を指摘する声が相次いでいる。改正法施行で現場は分断されてしまった。実効性のある対策を急ぎ、本格化する酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)で議論をさらに深めるべきだ。
肉用子牛価格の下落も深刻化し、補給金が21年ぶりに発動した。和牛繁殖経営は中山間地域の小規模、高齢の農家も多い。適正な価格形成と経営安定対策。この両輪が担保されてこそ、持続可能な畜産・酪農経営につながる。