[論説]新成人の君へ 希望の「種」見つけよう
18歳の進路はさまざまだろうね。大学や専門学校への進学、企業や団体への就職、実家の仕事に携わる人、フリーで活動する人もいるかもしれない。
君たちは、今の時代をどう見ているのだろう。地球温暖化は進み、世界のあちこちで戦争が止まらず、年明けの能登半島地震など自然災害も頻発している。いじめなどの暴力もなくならない。物価高騰が続く中で、生きること自体が苦しくなっている。ただ、そんな窒息しそうな社会の中でも、希望の「種」はきっと埋もれているはず。
生きづらい社会を変えていく種、それは食と農の在り方ではないかな。30年前、農業はまだまだ「家業」だった。でも今は、さまざまな経歴の人が、生きるために農業を選び、農村で暮らすようになった。食と農に価値を見いだす人が増えているのは明らかだ。“外からの風”で農業や暮らしのスタイル、地域社会の受け止め方が変わってきた。
必要なのは、それぞれの立場や考えを受け入れる「多様性と柔軟性」だと思う。自然に囲まれて暮らし、命を支える食料を生み出す基盤がある農業と農村にこそ、そうした可能性があると信じたい。
農村は、単なる食料生産の場ではない。代々受け継がれてきた豊かな文化や行事がある。参加したり、地域の人たちと運営したりすれば、生きるとは何か、その本質が見えてくるかもしれない。
都会で生活していても、暮らしの中に「農」を取り入れることはできる。「国産」や「地場産」のものを買って食べたり、プランターで野菜を作ったりすることで、農業や農村とつながってほしい。
実家が農家ではなくても、就農するチャンスはあるよ。実際、就農した経営者は「今の課題は農業界だけ、地域だけでは解決しない。他の地域や違う業種の人たちと連携することが重要なんだ」って話していた。立場の違う人と話すだけでも刺激をもらえ、自分の力になる。異業種が連携して地域の困り事を一つずつ解決していけば、より良い社会に近づくだろう。
政治にも関心を持ってほしい。選挙権を得た君たちは「どうせ変わらないから」と諦めるのではなく、自分はどう考えるのか、自分の軸を育てよう。違いを乗り越え、力を合わせることが、この時代を生き抜くことにつながる。