[論説]米の食味ランキング 品種が高位安定の鍵に
日本穀物検定協会がまとめる同ランキングは53回目。複数産地の「コシヒカリ」のブレンド米を基準に外観や香り、味、粘り、硬さ、総合評価の6項目で評価する。
今回は、産地品種数が前年と比べて8減の144。猛暑下で出品を見送った産地が一部あったが、結果を見ると特Aが3増えた。品種別では今回も最多が「コシヒカリ」(7)だったが、「にこまる」「きぬむすめ」(ともに6)などの高温耐性品種が追随する。山形「つや姫」、佐賀「さがびより」は連続で特A記録を伸ばし、初の特Aとなった青森「はれわたり」と秋田「サキホコレ」、静岡の東部と西部の「きぬむすめ」に加え、特Aに格上げされた滋賀の「みずかがみ」も高温耐性を備えている。気候変動が激しくなる中、柔軟な品種選びが今後も鍵を握りそうだ。
一方、苦戦が目立ったのは、酷暑と少雨の影響を強く受けた日本海側を中心とする東日本。特Aから格下げとなった産地品種は13あり、新潟「コシヒカリ」は、6地区のうち特Aが魚沼だけとなった。巻き返しを期待したい。
かつて“東高西低”と言われた米の食味だが、23年産と同様、猛暑による高温障害が発生した10年産のランキングを見ると、北陸を除き、愛知以西の西日本では特Aの数は6だった。その後、10年余りで品種の切り替えなどが進み、23年産は4倍の24まで増えた。「さがびより」で14年連続の特Aを獲得した佐賀県のJAさがは、指導的農家「さがびより米(マイ)スター」を中心とした高品質米生産が実ったとみる。指導的農家の技を横展開して、産地全体のレベル向上につなげている。
今夏も高温傾向が予想される。今回、特Aを逃した産地も潜在的な能力は高いが、十分に食味を引き出せないケースも見られた。環境が激変する中、迅速かつ柔軟に生産技術や品種選びを見直す必要がある。高温耐性品種の作付けは、22年産が約16万ヘクタールで全体の13%を占め、5年前から6万ヘクタール以上増えた。田植え時期を遅らせる他、品質低下を防ぐ追肥や水管理、適期収穫など栽培管理も徹底したい。
伸長する中食・外食向けの多収品種の導入など、業務需要への対応も急務だ。有利販売には食味の高位安定が前提条件となる。気候変動に負けない高品質な米を生産し、所得確保につなげたい。