[論説]内閣府の世論調査 適正価格実現の弾みに
世論調査は、①食品価格への対応や許容度②農業の環境負荷への認知度、環境に配慮して生産した農産物の購入意向③日本農業の魅力や課題への対応④農村との関わりに関する意識――について、約3000人から回答を得た。
特に、環境に配慮して生産された農産物に対し、価格が高くても購入したいという意向がうかがえた。化学農薬や肥料を減らし、土づくりを中心とした環境に負荷をかけない農業が鍵となりそうだ。
一方、「購入しない」と答えた人に理由を聞くと、「どれが環境に配慮した農産物か分からない」が最多だった。どのように環境に配慮して生産しているのか、分かりやすい表示が求められている。
この課題に対しては、農水省が3月から、環境負荷低減の取り組みがひと目で分かる「三つ星」ラベルの運用を始めている。米やトマト、リンゴなど23品目を対象に、温室効果ガスの削減度合いを星の数で示している。米では、生物多様性保全の取り組みも併せて表示できる。
JAグループは3月、化学農薬・肥料、温室効果ガス、プラスチックの削減を盛り込んだ「環境調和型農業取り組み方針」を決定。全JA挙げて環境調和型農業を実践する。同省の「三つ星」ラベルを積極的に活用することで、資材コストを反映した適正な農産物価格を実現したい。併せて政府による経営安定対策、直接支払いの拡充が欠かせない。
調査では、農村にも関心が高まっていることが明らかになった。5年前と比べて「農村地域への関心が高まった」とする回答は3割を占めた。特に東京都区部で36・5%、政令指定都市で33・5%と大都市でその割合が高かった。
背景には、新型コロナ禍や相次ぐ震災や気象災害で、大都市のもろさが明らかになったことがあるのではないか。
農村との関わり方について尋ねたところ、「特産品の購入」や「ふるさと納税」の回答割合が高いのに比べ、居住や就業の意向は低かった。農村で暮らし、仕事をする上での課題は、交通手段や医療機関、商業施設が不十分とする回答が上位を占めた。農村地域に人を呼び込むには、省庁横断的な施策が必要となる。
適正な価格なくして持続可能な農業は実現できない。世論調査の結果を、国会での審議にも生かすべきだ。