[論説]女性の政治参画 自治体のうねり JAへ
全国町村議会議長会は、町村議員に占める女性の割合が13・3%(2023年7月時点)と、前年より1・3ポイント上がったと発表した。同年4月の統一地方選で女性当選者が全体の15・4%となったことが押し上げる要因となった。市議選では、女性の当選比率が初めて2割を超え、女性市長の当選者は過去最多の7人となるなど、地方での女性参画が徐々に進んできた。この動きをさらに加速させよう。
女性の政治参画を進める上でお手本としたいのが、東京都杉並区だ。住宅地での道路建設を強引に進める区政に疑問を感じた20~90代の区民が結集し、「住民自治こそが民主主義」と唱える岸本聡子さんを22年、区長に擁立、当選させた。岸本さんは国際NGOの職員で、同区には縁もゆかりもない人である。
首長に選ばれるのは「地元で顔が利く人」が少なくない中で、同区民が求めたのは「女性、住民の声が届く人、党派を超えてみんなが応援できる人」だった。運動の中心となったのも女性で、PTA役員の経験を生かし人とつながり、さまざまな組織に声をかけ、うねりをつくった。暮らしの延長線上に政治参画があることを物語っている。
生活者の視点から政治に参画するのは、農村も同じだ。女性比率が11人中5人と全国トップの栃木県日光市農業委員会で会長を務める福田絹江さんは、家計を切り盛りする中で直面した課題に対し、声を上げながら経験を積んできた。前会長の星一徳さんは「女性がトップに立つのが難しいのなら、まずは女性をはじめ多様な声に耳を傾けてくれる『いいトップ』を自分たちでつくり上げることから始めてはどうか」と提案する。
男女平等に関する日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位(23年)と過去最低だ。特に政治参画は138位、経済参画も123位と立ち遅れている。
JAの女性組合長は535JA中3人。女性役員も10・6%と目標の15%に届かない。富山・JAなのはな組合長の谷井悦子さんは、JA運営にさまざまな声を取り入れる重要性は浸透しつつあるが、「まだ(全JAで)十分に実践されていない」とし、女性の意識を変えることも重要と指摘する。
政治に無関心でいることは、穏やかな暮らしが奪われても「何も言わない」ことに等しい。暮らしを良くする活動は本来、楽しいものだ。