[論説]JAと自治体 連携強め地域支えよう
JAグループは2021年に開いた第29回JA全国大会の決議で、中長期的な柱の一つに「持続可能な地域・組織・事業基盤の確立」を掲げ、24年までの取り組みとして「連携強化による地域活性化」を盛り込んだ。具体的には、地元自治体との防災協定や高齢者の見守り、地域振興に対する包括協定、林業や漁業、生協、商工団体との連携協定の締結などを挙げており、現在も各地のJAが取り組んでいる。
だが一方で、自治体関係者からは「JAは地域との関わりが少ないのではないか」との声も出ている。全国町村会の小野文明経済農林部長は「全国の首長の中には、地元JAへの関心が低い人もいる」と指摘する。地域おこし協力隊の創設に関わった地域活性化センターの椎川忍常任顧問(前理事長)も「地域おこし協力隊の隊員や県・市町村の職員から、JAの話題が出たことは少ない」と話す。背景には、JA合併による支店統廃合などで地元の支店がなくなり、管内の自治体や組合員との関係性が薄れてきたことがうかがえる。
求められているのは、地域振興という同じ目標に向け、JAと自治体の連携を強くし、ざっくばらんな会話ができる関係性を築くことだ。すぐ利益を生まないかもしれないが、新たな事業のアイデアや商品開発のヒントが得られる可能性は大きい。違う価値観、視点を取り入れてこそJA改革に結びつく。自治体職員や地域おこし協力隊、移住者、外国人など国籍や性、年齢を問わず、異業種と連携することが重要だ。
既に実践しているJAもある。愛知県のJAあいち尾東は基幹支店の大半を管内の自治体庁舎の近くに設けており、行政と気軽に話せる体制をつくっている。例えば、自治体との農業振興に向けた連携の打ち合わせなどはスムーズにできる。各種事業の手続き方法などもすぐに出向いて話し合えるため、意思疎通がしやすい利点がある。こうした取り組みを広げたい。
少子高齢化が進み、25年には国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、3人に1人が65歳以上となり雇用や医療、介護の体制維持が難しくなる。人手不足が加速する中、農業農村をJAだけで支えるのは限界がある。地元の自治体や団体、住民らと広く連携し、持続可能な未来を築こう。