[論説]食料自給率の目標 達成へ「本気度」を問う
食料自給率は、国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかを示す指標だ。基本法制定後の2000年に策定した食料・農業・農村基本計画で初めて目標に設定した。この時、1999年度に40%だったカロリーベースの食料自給率を2010年度までに45%に高める目標を掲げた。一方で、最終的には「5割以上を目指すことが適当」とも明記していた。
この一文は後に削除されたが、「国民の胃袋の半分くらいは国産で満たそう」とのコンセプトは十分理解でき、食の在り方を巡って農業者にとどまらず、国民的な合意を目指そうとした当時の意気込みが感じ取れる。
農水省によると、1965年度の自給率はカロリーベースで73%。その後、低下を続け、直近の2022年度では38%となった。自給率低下の要因として同省は、飼料の輸入依存度が高い畜産物の消費が増え、国内で自給可能な米や野菜、魚介類の消費が減少したことを挙げる。
だが、目標に全く届かない背景には貿易自由化がある。この間、政府は競争力強化に農政の重点を置いてきたが、果たしてどうだったのか。輸入価格が上がっても国産への切り替えが進まない現状をどう打開するのか。それを遂行する農業予算は十分か。国会での徹底した議論が必要だ。会計検査院も自給率目標が達成できない要因の検証が不十分と指摘している。
改正案では、食料自給率の他にも、食料安全保障の確保に関する目標を定めるとしている。政府は、生産資材の安定供給などは自給率だけでは評価できないため、と説明する。肥料原料の多くを一部の国からの輸入に依存する危うさが露呈した今、食料安全保障の状況を、より多角的に把握するのは当然だ。
だが、現行基本法の下でも政府は自給率の指標としての限界を指摘し、潜在的な供給能力を示す食料自給力、飼料自給率を考慮しない食料国産率など多くの指標を追加してきた。これが不要とは言わないが、食料自給率が上向かないことの言い訳に使ってきた面はないだろうか。
岸田文雄首相が言うように、食料自給率の重要性は変わらない。むしろ食料リスクが高まる中、国民各層が自給率向上に取り組む意義は増す。問われているのは、目標達成に向けた政府の本気度だ。