[論説]果樹の凍霜害対策 備え万全に花芽守ろう
近年は暖冬の後、4月に複数回、気温が氷点下まで急激に下がって霜が降りる傾向がある。長野県では2021年は4回の降霜があり20億円超、23年は5回で23億円超の被害が発生した。
果樹の凍霜害は気温上昇で生育が進んだ花芽が、気温の急降下と霜により壊死(えし)することで起こる。結実しなかったり、さび果や斜形果が発生したりする。特に寒暖差のある日は、園地の気温をいかに下げずに花芽を守るかが重要になる。
一般的な対策は、燃焼材を使う燃焼法や防霜ファンの活用だが、傾斜地や住宅が近い園地では使えず、近年は資材や燃料の高騰で対策を見送る人も増えている。そこで、県が提案するのは、日中地面に太陽熱を吸収させて地温を上げる対策だ。こつは①凍霜害の恐れがある時期にはわらを敷かない②地面が乾いている場合はかん水する③下草は短く刈り込む――ことだ。
同県松川町の「なかひら農場」が開発した防霜資材「芽守~めもり」も注目を集める。寒天由来の増粘多糖類の粉と糖蜜からなる資材を水に混ぜ、スピードスプレヤーや噴霧器で散布、ゼリー状の膜で花芽を覆って守るものだ。
防霜ファンや燃焼法を利用できない園地環境が開発のきっかけ。「農家のかゆい所に手が届くよう、安さと使いやすさを追求した」と中平義則社長。自園に合った技術を積極的に活用し、被害を防ごう。
被害に遭っても諦めないでほしい。同じ園地でも木によって成長度が違い、全ての花芽が壊死するわけではないからだ。県内のJA担当者は「人工授粉や、花粉がない場合は交互授粉で結実することも多い」と指摘する。
販売にも知恵を絞りたい。JA全農長野は昨年、170の取引先に「味は変わらない」と家庭用の売り込みを続けた。「ふぞろいの仲間たち」というタイトルと説明を付けたリーフレットや、産地応援を呼びかける手提げ袋を作ってPRし、農家の手取りを確保する工夫を重ねた。
西日本の生協でつくるグリーンコープは、JAながの飯綱りんご部会との30年の交流を基に「特別出荷基準」を設置。被害果を正規品と同じ価格とした。「買って」「食べて」応援することが農家と産地と食を守る。気候変動が激しくなる中、消費者への発信が一層、重要となる。