[論説]高齢単身男性の食生活 地域の声かけが支えに
食料・農業・農村基本法の改正案は、食料安全保障の確保が大きな柱。良質な食料が合理的な価格で安定供給できることを基本理念とし、国民一人一人が食料品を手にできるようにすることを重視する。そこで問題になるのが「買い物弱者」の存在だ。食料品の購入に不便や苦労を感じている人は一定数いる。
中山間地域では過疎・高齢化を受け、各地で暮らしに欠かせない食品店が閉店してきた。店が徒歩圏から消えていく。車を運転できる家族がいなくなれば、食料品の買い出しは難しくなる。いわゆる「食料品アクセス問題」が、表面化してきた。
同研究所のまとめでは、2020年時点で食料品の買い出しが困難だと思われる人は、全国で904万人と推計される。うち75歳以上は566万人と、63%に上る。高齢者が買い物弱者となっている実態が浮かび上がった。
食料品を簡単に購入できないとなれば、懸念されるのが、入手する食品の偏りや栄養状態の悪化だ。同研究所が食料品アクセス問題について調査する中で、一人暮らしをする高齢男性の買い物の特徴などが分かってきた。
高齢女性に比べ、食べている品目に多様性が少なかった。男性の単身世帯は卵と牛乳を除けば、多くの種類の食品を摂取する頻度が他の世帯より少ない傾向がうかがえる。緑黄色野菜や果物を食べる頻度も問題がありそうだ。こうした状況を改善するには、単身世帯への声かけなど積極的なアプローチが必要。
店舗が消え、徒歩での買い物が難しくなった農山村では、生協の宅配や移動販売車によって食料品を買いやすくする例もある。ところが、この手の方法で食品を購入する高齢単身男性は、女性に比べると少ないという結果もある。移動販売車に女性が集まると、なかなか行きにくい傾向もあるだろう。
調査は、高齢の単身男性に「(移動販売車や生協などの)多様な買い物手段にもっと触れる機会を提供しては」と提案する。一人暮らしの男性に集落の住民らが「一緒に行きませんか」と積極的に誘い、買い物に慣れてもらうのも手ではないか。買い物弱者対策は、集落や地域の仲間からの声掛けが大事になる。
誘い合って楽しく買い物をし、単身男性の栄養バランスを気にかけてあげてほしい。