[論説]食料の供給「不安」2割 国民理解は食農教育で
調査は2月に実施した。国内農業の課題について尋ねたところ、消費者の8割が「(課題だと)感じている」と答えた。具体的には「人手不足」(86%)が最多で、「後継者不足」(84・2%)、「生産コストの上昇」(51・2%)と続いた(複数回答)。
一方、食料安全保障に対して消費者の関心が低いことが浮き彫りとなった。国産農産物・食材の供給・生産の未来について「不安」と感じる消費者は22・6%で、「安心」(55・1%)を大きく下回った。その理由は「現時点で不安になるような支障が生じていない」がトップだった。コンビニやスーパーに行けば途切れることなく食品が並んでいるからだろうか。
ただ、国際紛争や気候変動で、日本がこの先も食料を安定的に輸入できる保証はない。国内の農業基盤も、高齢化に資材高騰が追い打ちをかけ、離農は相次ぎ、耕作放棄地は増え、弱体化に歯止めがかからない。国民全体に食と農の現状を知ってもらい、危機感を共有することが急務だ。
鍵となるのが食と農の教育だ。政府は食育推進に向け、2025年度までの達成を目指して24の目標を掲げる。農水省によると、このうちの11で数値が悪化し、目標と遠ざかっているという。
特に、産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ割合は、23年度が67・4%と、20年度に比べて6・1ポイント低下した。物価高騰などの影響で産地よりも家計を考慮し、食品を購入する人が増加したとみられる。食育に関心を持つ割合も、23年度が78・1%と同5・1ポイント低下した。
今一度、政府や自治体、JA、食品メーカーなど関係者それぞれが、農業体験の提供や食農教育の機会を意識してつくっていく必要がある。
政府の23年度食育白書の骨子案では、参考にしたい具体的な取り組みを紹介している。大手乳業メーカーの明治は、牧場や乳製品工場の見学で酪農への関心を高めている。横浜国立大学教育学部付属鎌倉小学校は、給食の残さで作った堆肥で野菜を育て、給食の食材に使っている。命を育てる機会を広げたい。
国会では25年ぶりとなる食料・農業・農村基本法改正に向けた審議が本格化する。焦点となる農産物の価格転嫁の実現も、国民の理解が不可欠だ。食農教育についても活発な議論を期待したい。