[論説]猛暑に負けない米作り 教訓踏まえ影響回避を
23年産米は高温障害が全国的に発生し、1等米比率(12月末現在)が過去最低の61%となり、米産地にとって非常に厳しい年となった。そうした苦境を乗り越え、育苗や代かき作業など24年産米の作付け準備が進んでいる。
高温対策への意識は確実に高まった。主産地は、高温耐性品種の作付け拡大に動く。新潟県は、23年産で高い1等米比率を記録した「新之助」を約5300ヘクタールと2割増やし、「コシヒカリ」からの転換を一定に進める。山形県は「雪若丸」を2割増の約5600ヘクタールにする見通し。富山県は「富富富」を1・5倍の約2500ヘクタールとし、28年産は1万ヘクタールに拡大する目標を掲げる。
高温耐性品種の作付面積は直近の統計がある22年産で15万9587ヘクタール。10年前の約3倍で、全品種の13%に上る。農水省も23年度補正予算で高温対策栽培体系への転換を支援するなど、耐性品種の導入を加速させたい考えだ。
国内ではこれまでも10、19、23年産と、大規模な米の高温障害が発生した。この経験から学びたい。酷暑などの気象災害がひとたび発生すれば、被害を完全には防げないが、品種や技術で影響を極力、抑えることは可能だ。
同省が発行する「地球温暖化影響調査レポート」によると、各産地の取り組みが分かる。白未熟粒や胴割粒の抑制対策では、水管理を徹底している産地が最も多く、適期移植・適期収穫、肥培管理などにも注力している。優良産地の事例を参考にしたい。
自治体による支援も広がる。新潟県は異常気象への対応で、人工知能(AI)による水稲生育予測システムを構築、高温下でも高品質な米生産へ支援に乗り出す。富山県やJAグループなどでつくる同県米作改良対策本部は4月上旬、県商工会議所連合会などの団体に対し、高温登熟を回避する遅植えを励行するため、田植え期の休日取得に配慮するよう協力を要請した。会員の中には兼業農家も多く、企業側の理解を促した。
気象庁は今夏も全国的に猛暑になるとし、農作物などの管理に注意を呼びかける。温暖化は今後も続き、手を打たなければ乳白米の発生が増え、品質低下は避けられない。
高温障害が起きれば、農家所得だけでなく、地域全体に影響が及ぶ。持続的な安定供給に向け、異常気象に対応した米作りが必須だ。