[論説]進む人口減少社会 女性輝く地域つくろう
人口減少社会は、農畜産物の消費減を加速させるなど、日本経済にも大きな影響を与える。総務省の発表によると、75歳以上は2007万8000人と初めて2000万人を超え、全体の16・1%を占める。65歳以上は29・1%と過去最多を更新した。
一方で、15~64歳の生産年齢人口は、59・5%と前年比0・1%増にとどまり、15歳未満は11・4%と、過去最低になった。都道府県別でみると、一極集中によって東京だけが2年連続で増加しただけで、他の46道府県は減った。減少率が前年より拡大したのは38道府県で、最も高かったのは秋田の1・75%だった。農村や中山間地では、農業の担い手不足や過疎化の一層の進行が懸念される。
こうした中、高知県は新たに「人口減少対策総合交付金」を創設した。24年からの4年間で40億円を充て、人口に応じて各市町村に配分する。具体的な使途は移住や婚活の支援など、各自治体が決められるようにする。
背景にあるのが、出生数の減少だ。高知県の22年の出生数は3721人と、長年維持してきた4000人を下回り全国で最少となった。このため県は2月、全ての市町村で、20~34歳の女性の割合が、20年の全国平均を上回るように目標を定めた。
若い女性が流出する地域の未来は危うい。男性優位社会からジェンダー平等の社会に変えていくことが、持続可能な地域につながる。
兵庫県豊岡市は、21年に「ジェンダーギャップ解消戦略」を策定した。前市長の中貝宗治氏は「『女・子ども・よそ者は黙っていろ』と言うようなところに、女性や若者は帰ってこないし、入ってこない」(「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」)と指摘している。
結婚や出産を機に女性だけが退職を余儀なくされる風潮を変えようと、子育てが一段落したら同じ職場に戻れる「カムバック制度」を導入するJAや企業もある。JA松山市は正職員として3年以上の経験があり、育児や介護などを理由に一度、退職した職員を対象に「カムバック支援制度」を新設した。即戦力を確保する狙いがある。
少子化問題の解決の糸口は、若い女性が生き生きと暮らせる地域に変えることから始まる。誰もが生きやすい社会をつくろう。