[論説]熱中症対策 労働災害と捉え警戒を
気象庁が発表した5~7月までの3カ月予報、夏(6~8月)の天候見通しでは、今年も全国的に気温が高くなるという。熱中症特別警戒アラートの運用開始を受け、林芳正官房長官は「アラートが発表された際は、まさに未曽有の事態が起こりかねない」とし「関係省庁が連携し、国民の命を守る対策を一層強化する」と述べた。
農水省によると2022年の熱中症による死者数は29人。死亡事故の6割は農機の転倒などが原因だが、次いで多いのが熱中症だ。温暖化が進み、熱中症で亡くなる農家の割合は増加傾向にある。
政府は、30年までに熱中症による死亡者数を、現状から半減させることを目指す。農水省は5月から7月までを熱中症対策研修実施強化期間に据えた。全国に約5000人いる農作業安全の指導者を中心に研修を実施し、高温時の作業を避けることや、20分おきに休憩して水分を補給することなどを呼び掛けるチェックリストの活用を促す。外国人実習生らに向けてベトナム語やタイ語など9カ国語の啓発ちらしも作成した。
できることから熱中症対策を始めよう。まずは、暑さに慣れる体づくり「暑熱順化」を意識したい。これができていないと、体の熱を外に逃がすことができず、熱中症の危険性は高まる。軽い運動や入浴により、意識して汗をかくことで体を暑さに慣れさせていく。個人差もあるが、数日から2週間ほどかかる。日本気象協会によると暑熱順化を始めるタイミングは九州は4月下旬、中国・近畿・東海は5月中旬、関東、信越、北海道では5月下旬という。今のうちから備えよう。
本格的な暑さが訪れる前にエアコンを試運転しておくことも大切だ。同協会によると毎年7月前後に、エアコンの修理や取り付け工事が集中する。買い替えが必要になっても、設置まで数週間かかる場合もあり、自宅で熱中症になるリスクも高まる。
国際労働機関(ILO)によると、酷暑は熱中症に加え、脱水症状で腎臓病を引き起こす恐れもあるという。皮膚がんなどのリスクを高める紫外線対策にも気を配りたい。
天気予報をこまめにチェックし、暑くなる日は朝夕の涼しい時間帯に作業をずらすなど、体が暑さに慣れていないこの時期こそ注意しよう。