[論説]「土の日」に考える 足元見直し負荷軽減を
「土の日」は、1972年にJA全農が制定した。漢数字の「十」と「一」で「土」となることから、10月の第1週目の土曜日とした。73年の全国農協大会では「土づくり運動大綱」が決議され、官民挙げて土壌診断に基づく適正施肥の強化を呼びかけた。
当時から半世紀が過ぎ、世界人口は80億人超と倍増した。世界の8月の平均気温も昨年と並んで過去最高を記録、毎月のように過去最高を更新している。気候変動に加え、人口増で食料の需要は増え続ける中、人も作物も経験したことがない高温への対策が迫られている。
土づくりは、まず現状を知ることから始まる。高齢化や農業者の減少で経営面積が拡大傾向にある中で、効率的に地力を把握し、適正施肥につなげる必要がある。
参考にしたいのが、普及が見込まれる栽培管理支援システム「ザルビオフィールドマネージャー」と連動させた可変施肥の取り組み。全農が現場での導入を後押しする。「ザルビオ」は、人工衛星から取得したデータと過去の状況を人工知能(AI)が解析し、圃場(ほじょう)の地力マップを自動で作製する。
パソコン上で地力が色の濃淡で表現され、同じ圃場内でも、ばらつきが一目で分かる。対応する農機を使い、可変施肥で必要な箇所に適量の肥料を与えれば、肥料の使用量を抑えられてコスト削減と環境負荷軽減が見込め、収量も安定する。衛星からのデータは場所を選ばず使えるため、中山間地域での活用を検討している産地もある。
肥料高騰で注目が高まる畜ふん堆肥の活用も、新たな試みが始まっている。全農や農研機構などは、広域流通に向け、牛ふん堆肥の入ったペレット肥料を製造、米作りに活用。化成一発肥料の3割をペレットに置き換えて栽培する試験を進める。実際、群馬県の牛ふんで作ったペレット堆肥を新潟県の水田で使ったところ、通常の化成肥料と同等の生育だったという。野菜ではトラクターで畝立てと同時に局所施肥を行い、緩やかな肥効となるか試験中だ。
日本の土壌は、黒ボク土や褐色森林土など大きく10種類に分類される。環境とコストを意識し、まず土壌分析から始めたい。今年は国連が2015年に定めた「国際土壌の10年」の最終年。命の源である土を見直し、気候変動に負けない作物を育てよう。