コロナ下の高齢者 つながりで孤立防ごう
東京都健康長寿医療センターは、別居の家族や親戚、友人・知人との交流が週に1回もない状態を「社会的孤立」とし、2020年に約3万人を対象に全国調査した。結果、コロナ禍で全体的に増えたが、中でも増加が目立ったのが70代の男性高齢者だ。8月時点で34%が孤立し、1月から10・5ポイント高まった。
外出を自粛し、自宅に1人で引きこもる時間が長くなると運動不足や食事の偏りなどで筋力や体力が低下、要介護一歩手前のフレイルという状態に陥りかねない。人との会話や交流の減少は、認知機能にも影響する。新型コロナの感染を防げても、孤立による被害が問題視されている。
ワクチン接種が進み感染や重症化リスクが抑えられてきたとはいえ、感染予防には人との接触機会の減少が重要であることに変わりない。3密を避ける「新しい生活様式」で高齢者の孤立をどう防ぐか。状況に応じたさまざまな手法を用意する必要がある。
コロナ禍の下で大きく進んだのがオンラインによる交流だ。自治体などを中心に、高齢者のフレイル対策として、スマホやパソコンを使った運動や料理の教室を開催。情報通信機器の使い方を教えるだけでなく、端末を貸し出すなどきめ細かな対応で参加を促す。男性の参加率が対面で開いていた教室より高まった例もあり、集団活動を苦手とする人のニーズにも対応した。
他にも、文通や、インターホンや窓ガラス越しの声掛けなど、感染予防に努めながらの“つながり”方について、多様な実践や提案が行われている。
JAの取り組みにも期待したい。一つは、7月から始まったスマホ教室だ。高齢者がスマホを扱えるようになり、遠方の子や孫とLINEで会話できたら孤独感はかなり解消されるだろう。
加えて、従来からの介護予防を兼ねた見守りはコロナ禍の下でも大きな意味を持つ。マスクの着用や検温を徹底して続ける声掛けや弁当配達は、たとえ対面時間を短くしても孤立を防ぎ、交流による刺激が認知機能を活性化させる。オンラインと対面交流のあらゆる手法を駆使しよう。
スマホ教室や介護予防活動などは、今月開く第29回JA全国大会の議案に盛り込んでいる。新型コロナから守った命が孤立で危険にさらされないよう、組合員・地域住民を支える取り組みを進めたい。