[論説]米農家への所得補償 与野党協力し議論前へ
農水省が2日に発表した5月19~25日にスーパーで販売された米の平均価格は、前週比25円安の5キロ4260円と3週間ぶりに下げた。だが、前年同時期と比べるとまだ2倍の水準となっている。
米をはじめ物価高が消費者の家計を圧迫する中、石破首相は5月21日の党首討論で、米価格について「(5キロ)3000円台でなければならない。一日も早く実現する」と政府介入による引き下げに言及した。石破首相は小泉進次郎農相に政府備蓄米の売り渡し方法の見直しを指示。一般競争入札から、同省が売り渡し価格を決めて小売りに直接販売する随意契約に変更した結果、店頭価格は5キロ2000円程度に抑えられた。
行き過ぎた米価上昇は、消費者の米離れを招く。消費者、生産者双方が納得できる適正価格はどこか、議論を深めていく必要がある。
米農家は長らく米価低迷に苦しんできた。コロナ禍で業務需要などが落ち込んだ21年産は、相対取引価格が60キロ1万2804円まで下落。生産資材高騰が追い打ちをかけ、採算割れに追い込まれた農家も少なくない。食料安全保障を確保し、国内の農家を守るためにも、所得補償の議論をためらうべきではない。
最近の米価上昇でようやく経営が好転した農家も多いだろう。政府が米価引き下げに動く異例の事態に、戸惑いを覚えるのも無理はない。
米は高くてはいけない――。そんな雰囲気が生産現場に漂えば、米を作る担い手は増えないだろう。安定供給は難しくなり、結果として米価高騰を招く可能性もある。
米農家への所得補償に対し、石破首相が前向きな発言を繰り返していることに着目したい。5月19日の参院予算委員会では「努力をした方々が行き詰まることがないような補償は認められるべきではないか」と強調した。野党も米の所得補償を求めている。
石破首相が言及するのは、一部の担い手に対象を絞り込んだ所得補償で、幅広い農家を対象にする野党案とは開きがあるが、着地点を見いだしてほしい。衆院は少数与党の中、野党の重みが増し、熟議の機運が生まれている。
政府は5日、米の安定供給に向けた関係閣僚会議を初めて開いた。これ以上農家を減らさないために、米農家の所得確保に向けた議論を前に進めてもらいたい。