[論説]小泉農相の米政策 再生産価格確保が鍵に
米の価格を巡っては、テレビやネットで連日のように取り上げられ、国民の関心事項となっている。米がこれほど話題に上るのは、主食としていまだに健在である証しだ。米を通して農業や農村、JAの役割を正しく発信し、理解につなげる必要がある。
農水省は、米問題に特化した500人の対策チームを設置、小泉農相は「最優先課題は米の価格を安定化させること」と強調。備蓄米の随意契約により、店頭価格が5キロ2000円程度という、半値での販売を実現した。
価格が一定に下がり、国産米の消費拡大につながることは歓迎したい。ただ、懸念されるのは「再び米の価格が暴落するのではないか」と不安を募らせている農家が多いことだ。5キロ2000円という安値のインパクトに引っ張られ、2025年産以降の米価格に影響が及び、再生産価格を割り込む事態となれば、農家の減少にますます歯止めがかからなくなるだろう。
政府は農地の大区画化やスマート農業の推進などで現状打開を目指す方針だが、耕地の4割を占める中山間地域、都市農業など多様な農業形態に配慮した支援こそ必要だ。
私たちは食べなければ生きていけない。自動車などの工業製品と違い、農業は命を支えるなりわいだ。気候変動をはじめ世界各地で紛争が絶えない中、足りなければ輸入すればいいという時代は終わっている。「令和の米騒動」を教訓に、国民に主食を安定供給できる体制構築が急がれる。政府は性根を据えて食料安全保障の予算を拡充し、生産基盤を強くすることに重点を置いてもらいたい。
石破茂首相は参院予算委員会で、生産コスト削減などの努力を前提に、農家に対する所得補償に前向きな姿勢を示した。米価抑制と農家所得の確保には「努力をした方々が行き詰まることがないような補償は認められるべきではないか」と述べた。国会で審議が進む農畜産物のコストを反映した適正な価格形成と所得補償の両輪で、多様な担い手が農業に希望を持って参入できる環境整備を求めたい。
小泉農相は「生産者が意欲を持って農業に従事できることを達成する」と語った。意欲を持てる農業は、再生産できる価格の確保が大前提だ。消費者目線だけでなく、「生産者目線」を大切にした農政を展開してほしい。