[論説]自治体農政とJA 地域課題解決へ連携を
地域の中に、農家ではない住民が増え、農のある暮らしをしながら仕事をする「半農半X」や移住者ら、さまざまな人が農業に関わるようになった。生産から加工、販売までを担う6次産業化も進んでいる。こうしたことを背景に自治体による農政は、米を核とした関係人口の創出や観光農業、集落機能の維持など個性的な取り組みが広がる。
一方、多くのJAでは、自治体との連携が進んでいない。「JAの組合長には自治体の行事に来てもらうくらいしか関係性がない」(東日本の自治体農政担当者)、「町の農政を計画する時、JAを考慮していない」(西日本の首長)などの声もある。地域に基盤を置くJAとして、自治体とどう関わるか、改めて戦略を組み立て直す時だ。
各省庁の地方創生事業は、自治体との連携が大きな鍵となっている。例えば地域おこし協力隊は、総務省から自治体に交付される特別交付税が活動の原資となっている。協力隊の任期を終え、新規就農を選ぶケースも増える中、JAが受け入れ主体となる手もあるはずだ。他にも、多様な組織が連携して脱炭素を進める地域を支援する環境省の事業や、空き地を菜園にする取り組みを支援する国土交通省の事業など、自治体と連携することでJA事業の幅が広がる。自治体との連携により、他の事業者ともつながる貴重なチャンスにもなる。
ある省庁の幹部は「地方創生が石破政権の重要施策に位置付けられる中、農水省以外でも、JAが活用できる補助金は少なくない」とみる。だが、「だいたい決まったJAしか関心がない」と指摘する。
JAと自治体は、類似した課題を抱えている。職員の数は減り続け、その分業務が増え、若い職員の離職が止まらない。独自財源は乏しく、挑戦したい事業に取り組めないといった課題もある。共に連携することで課題を解決できることもある。まずは自治体とJAのトップや担当職員らが、互いにコミュニケーションをとることから始めたい。
日本農業新聞の連載企画「自治体農政 首長語る」では、千葉県船橋市の松戸徹市長が、管内2JAの幹部や青年部らとコミュニケーションを日常的にとり、協力体制にあるとし、「JAと共に地域農業を発展させていきたい」と述べた。こうした関係の構築を全自治体、JAに広げたい。地域の課題解決に向けた大きな一歩となるだろう。