輸入小麦の高騰 需要に応え国産増産を
半年ごとに決まる輸入小麦の政府売り渡し価格は、2021年10月に平均19%、22年4月に同17・3%上がった。現在は過去2番目の高値で、パンやパスタといった小麦製品の値上げが相次ぐ。ただ、現状の要因は、中国の飼料用需要の増大や北米産の不作による相場の高騰だ。今年2月に始まったウクライナ侵攻の影響が本格的に表れるのは、10月からの次期価格となる。
ロシアとウクライナはともに小麦の主要輸出国。侵攻に伴う供給不安で、両国からの輸入が多いアフリカでは既にパンの価格高騰が報道されている。日本は米国やカナダ、オーストラリアからの輸入がほとんどだが、国際相場の上昇で、次期売り渡し価格の一層の高騰は避けられない。
3年連続の豊作や新型コロナウイルス禍による外食需要の落ち込みで、国産小麦には過剰感がある。だが今後も世界の人口や食料需要の増加などで安定・安価に輸入できる保証はなく、食料安全保障上、中長期的な増産が不可欠だ。主食用米の需要減が続く中、転作作物としても作付け拡大の必要性は高まっている。
輸入小麦が高いなら、国内でもっと作ってほしいと素朴に考える消費者も少なくないだろう。増産の契機とするべきだ。
政府は4月に決めた物価高騰の緊急対策で、食品業者が輸入小麦から国産に置き換える際の助成に100億円、今秋に種をまく小麦の増産支援に25億円を計上した。しかし大手製粉業者は、食味や食感などの品質が一定に担保される輸入小麦に比べ、国産は「使いづらい」と指摘。地域や年による品質や収量のばらつきが大きいためだという。
これでは、支援があっても増産は長続きしない。品質や収量の安定は転作小麦の長年の課題で、排水対策など基本技術の徹底が改めて必要だ。
また、近年はパンや麺など特定用途向けの品種が増えていたが、実需者には、特徴が少なく、幅広い用途に使える小麦を求める声がある。品種選びも含めて要望に応え、切り替えを促す必要がある。
一方で実需者にも、中長期的に原料を安定確保する視点などから、国産小麦の増産をこれまで以上に後押ししてもらいたい。課題や需要などについて情報交換し、産地を伸ばす意識を持ってほしい。研究機関には、実需者の要望に合った、転作で作りやすい品種の開発なども急務となる。