
小林君は、JA全農が新潟県新発田市で5月下旬に開いた「石川佳純47都道府県サンクスツアー」に参加。石川さんから直接指導を受けられるメンバーに選ばれた。
石川さんが引退を発表した昨春、本紙「農家の特報班」は読者に、石川さんへのエールの言葉を募った。小林君は、父の政史さん(50)を通じ「いつか新潟に来て卓球を教えてほしい」とのメッセージを送ってくれた。その願いが実現するとの連絡が入り、記者は取材に向かった。
石川さんと卓球のラリーを交わした小林君は、球の早さに加え「目が鋭かった」と世界の強豪と戦ってきたすごみを肌で感じた。

卓球を始めて1年足らずで小学生以下の全国大会に出場した小林君。卓球クラブの練習場を訪ねると、最初は友人とおどけていたが、練習が始まると目つきが変わった。
監督とのラリーでは失敗しても「もう一回!」と声を張り上げた。「ミスが続くと悔しくて泣きたくなるけど、スマッシュが決まるとうれしい」。
石川さんのファンになったのも「スマッシュが強くて格好いい」と心を打たれたからだ。きっかけは2012年のロンドン五輪。まだ生まれていなかったが、後に見た映像で、果敢にスマッシュを打つ石川さんの姿に、感銘を受けた。
家庭での表情も、のぞかせてもらった。練習前の夕食。大好物の祖母の炊き込みご飯を「おいしいね」と頬張りながらも「早く練習に行きたい」と頭の中には卓球のことが浮かんでいた。

イベント内のトークショーで、石川さんは参加した児童らに「好き嫌いなくバランスよく食べ、強い体をつくってほしい」と助言。小林君も真剣な面持ちで耳を傾けていた。

小林君が姿を現すと、石川さんは「ありがとね。握手しようか」と手を差し出し、小林君はしっかり握り返した。「頑張ってね」とエールをもらうと、小林君は少し照れながら、うなずいた。
「絶対卓球選手になる。まずは、ご飯をたくさん食べて体力をつけます」。別れ際、小林君はそんな決意を教えてくれた。

