
「良いニンジンには土が一番大事。柔らかい土にするため、緑肥を入れ、土づくりに時間をかける」と話すのは、約1・3ヘクタールで栽培する山田義夫さん(51)。畑に5条で植えている。専用の収穫機「キャロベスター」でとれるのは1列のみ。父が運転し、山田さんと母は、病害虫などで規格外となったものを取り除き、コンテナへ入れていく。いっぱいになると約20キロ。記者には持ち上げきれない重さを、声も出さずにトラックへ積み込む。根気強く、これを反復する。まるでスポーツ選手がトレーニングするかのように黙々と続けた。取材日は、コンテナ72個を選果場へ2度運んだ。


生産する各務原市園芸振興会にんじん部会は、44戸で構成。2024年の春夏作は約50ヘクタールで約2000トン(約4億2000万円)を収穫。秋冬作は約30ヘクタールで約260トン(約4800万円)だった。特徴は、発色の良いオレンジ色。臭みがなく、子どもも食べやすい味だ。

同市は、木曽川を境に愛知県に隣接。肥沃な黒ボク土が堆積した鵜沼地域を中心に、明治時代末期から栽培してきた。寒暖差が小さく安定した気候と、水はけが良くフカフカした土壌がニンジンに最適という。
同地では、半数の農家が夏に種まきして二期作する。全国的に出荷量が少ない11月も供給し高単価を狙う。
JAぎふの営農指導員の浅野剛さん(28)は、販売先に農家が再生産可能な価格を提示し、単価を交渉する。「30~50代もいて、面積拡大もできる部会。農家と農協一緒になって各務原にんじんを盛り上げていきたい」。産地の活気が伝わってきた。
(鴻田寛之)