亘理町・亘理枡取り舞

一時衰退したが、1955年ごろ、亘理4Hクラブが復活させようと立ち上がり、「亘理枡取り舞保存会」を結成。1987年に亘理町の無形民俗文化財に指定された。
会員の高齢化で一時解散の危機にひんしたが「伝承を絶やすまい」と、現代表の富山剛久さん(62)ら有志2人が受け継いだ。
富山さんは、同町唯一の表具工房で表具師として仕事を行う傍ら、町の伝統郷土芸能を伝える団体「伝統文化保存 道岳館」の代表も務めている。
2019年から、子どもたちと地域住民が交流する「放課後楽校」をきっかけに、同町立吉田小学校3年生の総合学習の中で伝承活動に取り組むようになり、学校行事や郷土資料館のイベントで披露されている。
富山さんは「子どもの頃の思い出はいつまでも心に残る。伝承を覚えていてほしい気持ちもあるが、枡取り舞を通じて、郷土愛を高め、大きくなっても帰る古里があることを覚えていてほしい」と話す。
川崎町支倉地区・支倉豊年踊り

五穀豊穣を願い、盂蘭盆会(うらぼんえ)の行事として、村人総出で舞い踊られたのが起源といわれる。1926(昭和元)年、現在の「宮城蔵王支倉豊年踊り保存会」が発足。佐山吉右エ門氏が会長を務め、現在は孫の佐山哲さん(70)が2代目として40年以上会長を務めている。
「佐山家の一族は小さい時から踊りや太鼓を仕込まれ、有無を言わさずやらされた」と笑う佐山会長。町の無形民俗文化財に指定されているこの踊りは、佐山家の親族が中心となり、地域住民と共に継承してきた。
会員は町内外に約25人。毎月2回、地区の支倉郷土文化伝承館で練習している。
富岡小学校と富岡中学校で40年以上も踊りを指導しており、中学生らは文化祭で、小学生らは運動会で毎年成果を披露している。
毎年6月に開かれる「支倉常長まつり」では、保存会のメンバーと小・中学生らの見事な合同演舞が見られる。
佐山会長は「地域に根差した郷土芸能なので、皆さんにご協力いただきながら、これからも伝統を守り続けていきたい」と語る。
石巻市桃生町・寺崎のはねこ踊

笛や太鼓で奏でられるリズミカルな曲調に合わせて跳ね踊る、全国に類を見ない躍動的な踊りで、田打ちや稲刈りなどの所作が見られる。
この郷土芸能を後世につなごうと1967年、地元有志が「寺崎はねこ踊り保存会」を結成した。
かつては寺崎地区以外でも踊られていたが「寺崎のはねこ踊」が唯一残り、2009年に県の無形民俗文化財に指定された。
1974年から年に数回、地元の小学校に保存会のメンバーが出向いて踊りを指導。現在は中学校にも出向いている。
保存会では毎週練習会を開き、踊りと囃子(はやし)の練習と指導を行い、寺崎地区の寺崎八幡神社大祭や「ものうふれあい祭」他、国内外のイベントなどで舞われている。
昨年、会長を引き継いだ若山智彦さん(66)は「はねこ踊りに触れた子どもたちには一人でも多く、郷土芸能に興味を持ってもらいたい。今後も国内外に広く発信し次世代に残していきたい」と話す。
富谷市原地区・富谷田植踊り

笛と太鼓に合わせて歌いながら、田植え作業を写実的に表現した踊りで、正月に集落を練り歩く他、祭りや祝い事などに招かれて踊り、継承されてきた。
1959年に富谷市原地区の地域住民が「富谷田植踊り保存会」を結成。翌年、宮城県指定無形民俗文化財に指定された。
保存会は2008年頃から「富谷小学校伝承芸能クラブ」で指導し、後継者の育成に力を入れている。コロナ下は活動を自粛したが、22年から同校に年8回、富谷中学校にも年2回ほど出向いて指導している。
指導をきっかけに現在、保存会には高校生2人と小学5年生1人が在籍し、富谷市の新年祝賀会などで踊りを披露している。
50年前に入会した保存会の現会長・若生隆雄さん(73)は、会長に就任して11年。JA新みやぎのOBで「ひとめぼれ」を0・4ヘクタール、自家用にネギなどを栽培している。
若生さんは「指導をきっかけに若い世代が入会している。今後も後継者を育成し、歴史深い伝統芸能を後世へ残したい」と話す。
大崎市西古川地区・保柳神楽

現在は「保柳神楽(ほやなぎかぐら)」として大崎市民に親しまれ、1974年に旧古川市、2006年に大崎市(旧古川市)の無形民俗文化財に指定された。
この神楽を守り伝えているのが「南部本流保柳神楽保存会」。故千葉清四郎さんが明治時代に設立し、現在、西古川地区の菅原吉治さん(70)が9代目代表を務めている。
菅原さんを含めた5人が所属。太鼓、摺鉦(すりがね)、舞を担当し、同市のお祭りやイベント、西古川地区の夏まつりなどで神楽を披露している。
旧西古川小学校に「子供神楽クラブ」があった頃は同校で指導し、児童らはお祭りなどで神楽を披露。運動会では全校児童が神楽を舞うのが定番だった。
太鼓を演奏する高橋利昭さん(62)は「今は太鼓をたたけるのが自分しかおらず、少ない人数で頑張っている」と語る。
継承者がいないのが課題だが、菅原さんは「地域を問わず、子どもたちや若い人にも神楽を知ってもらい、後世に伝えていきたい」と話す。