主要市場での2022年の種雄牛別の取引頭数で、「福之姫」産子がトップだった北海道。網走市で繁殖牛約200頭の和牛繁殖経営をする佐藤裕之さん(57)は「素晴らしい牛を亡くした。早過ぎた」と惜しむ。精液の供給開始後すぐに使い始め、成績と歩留まりの良さ、「狙った通りの牛ができる」と驚いた。
子牛価格も「他産子より飛び抜けて高かった」と佐藤さん。雌産子を15頭ほど残しており、孫世代にも期待を寄せる。
「福之姫」は栃木県内の農家が育成した。“故郷”の同県にある矢板家畜市場の近年の取引頭数の1割以上は「福之姫」の産子。市場担当者は「成績に加え、地元から出た牛として思い入れのある人も多かった」と話した。
「市場は福之姫の横綱相撲と言われるくらい素晴らしい種雄牛。農家の力になってくれてありがとう」と感謝の言葉をつづる人もいた。手元に「福之姫」の精液が少なく「大事に使わなきゃ」と、名牛が残していった遺産の貴重さを実感する人もいた。
一般的に種雄牛は15~20歳ごろまで生きていることが多い。同団の担当者は「これからも活躍できるはずだったので、私たちにとっても、農家にとっても急な出来事で驚きが大きい」と突然過ぎる死を惜しんだ。
同団は6日、ツイッターの公式アカウントに「ありがとう福之姫」のタイトルで投稿。「福之姫」の姿を写したパネルに献花した写真とともに「和牛改良への功績に敬意を表する」「お疲れ様でした」などのメッセージを発信した。