国内での相談急増
全国の害虫駆除専門業者らでつくる「日本ペストコントロール協会」によると、被害は戦前からあったが、衛生環境の改善や殺虫剤の普及で1970年ごろに激減。しかし、2000年ごろに米国などで広まると、日本でも10年ごろから少しずつ増加している。滞在していた施設から知らない間に手荷物と共にトコジラミを持ち込んでいるとみられる。
同協会に寄せられた相談は09年度130件だったが、22年度には5倍超の683件に。東京都では05年度の26件から22年度は405件と16倍に増えた。
フランスでは社会問題化
一方、フランスでは空港や宿泊施設などで目撃情報が相次ぎ、学校が休校したり、国民議会(下院)で議論されたりするなど大きな社会問題となっている。
兵庫医科大学皮膚科学の夏秋優教授によると、トコジラミは20度を下回ると活動が鈍り冬眠状態になるが「ホテルや旅館のように常に暖かい気温を維持している場所ではほとんど休眠しない」という。
宿泊施設は要注意
3年前にニュージーランドを旅行した日本人の女性会社員(33)は滞在中に2度、宿泊施設のベッドで刺された。「気付いたら手の甲や足首などを刺され、何カ所もプツプツと皮膚が小さく盛り上がった。体は熱っぽく、かゆ過ぎて寝られなかった」と女性は振り返る。かゆみ止めを塗ったが、数日は手足が腫れたままだった。
同協会は宿泊施設などに対し、トコジラミが見つかれば「速やかに駆除を」と促す。担当者は「かばんや服、靴などに紛れて運ばれるので、潜んでいそうな場所ではチェックしてほしい」とし、刺されたら皮膚科の受診を勧める。