産地支える「おてつたび」 農繁期の働き手確保 JAひろしま三原地域本部
【ひろしま】収穫シーズンに入った尾道市のかんきつ産地で、旅行者が農家に出向き、繁忙期の作業を支えている。旅行者と農家をつなぐのはマッチングサイト「おてつたび」。JAひろしま三原地域本部などが事務局を担い、人手不足に困る地域と、働きながら旅行がしたい人を引き合わせる。今シーズンは市内のかんきつ農家3戸が利用。人材確保の一手として定着している。
「農業やかんきつが好きな人が多く、実の取り方も丁寧」。同市瀬戸田町のかんきつ農家、原田充明さん(40)は、同サイトを通じて受け入れた旅行者らの手つきに感心する。
原田さんの園地で昨年から、かんきつの収穫に携わる廿日市市在住の大学生、岬姫女さん(21)は「実を傷つけないよう一つずつ丁寧に切り取る作業は、普段の生活ではできない経験。自分の財産になる」と話す。
レモンやミカンなどを4ヘクタールで栽培する原田さんは「人手が確保でき、作業負担が減っている。今後も活用したい」と話す。
原田さんは本年度、既に14人とマッチングが成立。翌年3月の収穫シーズン終了まで受け入れる予定だ。旅行者は1週間から1カ月程度、市内の宿泊施設に滞在。午前8時から作業し、週1回の休みに地域を観光する。
尾道市のかんきつ産地で、「おてつたび」の旅行者がかんきつ類の収穫に携わるようになったのは2020年から。市とJR西日本、JAひろしま三原地域本部が連携し、同サイトを活用。農家と旅行者をつないでいる。
JA三原地域本部柑橘(かんきつ)事業部の野田泰三部長は「リピーターも多い。農繁期の労働力確保の選択肢として期待している」と話す。
馬と一緒に「移動楽しむ」 北海道標茶町など
【北海道・根釧】農耕馬や軍馬を古くから生産してきた北海道の標茶町を含む釧路地方で、釧路湿原などを乗馬で楽しむ「ホーストレッキング」の観光化が進む。馬産地としての歴史を地域活性化に結び付けようと、行政と馬事振興に携わる民間事業者らの組織が連携。「移動を楽しむ」という新たな視点の旅行商品で自然に触れる機会を提供し、地域への誘客を狙う。来秋からの展開を計画する。

標茶町、民間事業者らでつくる道東ホースタウンプロジェクト、北海道開発局釧路開発建設部の三者が「うまたび×かわたび」と銘打って2021年からツアーの商品化に着手。馬に加え、カヌーや自転車、汽車などを使って釧路川や釧路湿原などを訪ねる。
今秋、標茶町と釧路市、鶴居村にまたがるテストツアーを開催。参加者らは馬を使って釧路川の河川敷を周遊したり、湿原のビジターセンターに向けて移動したりして、コースや馬の状態を確認した。
ツアーの商品化に携わる同プロジェクトの岡本昌代表は「目的地への移動も旅の一環として楽しむというのは新しい考え方。自然を楽しみたいと望む観光客を掘り起こしたい」と思い描く。