プロ野球・中日ドラゴンズで昨年8月に起きた“令和の米騒動”が話題となった。選手の動きが鈍ったのは白米の食べ過ぎが原因だとみた監督の指示で、試合前の食事会場から炊飯器が撤去され、選手に白米の提供が禁じられた――とされるものだ。しかし、米が運動の支障になるのだろうか。本紙「農家の特報班」がスポーツ栄養学の専門家に聞いた。
◆おにぎり手軽さが◎
「ご飯は試合前の補食に最適。ただ、食べ過ぎればパフォーマンスが落ちる」。公認スポーツ栄養士の資格を持ち、ラグビーのリーグワンやサッカーJ1のチームなどの栄養サポートを担当してきたフードコネクション(東京都新宿区)の橋本玲子代表はそう指摘する。
橋本さんによると、競技を問わず、試合で最高のパフォーマンスを発揮するには試合前に補食を取って①試合で使うエネルギーを補給する②空腹で集中力が切れないようにする――ことが重要だ。補食には、体内で素早くエネルギーに変わる「糖質」の多い食材が望ましい。
糖質は穀類や芋、果物などに多く含まれるが橋本さんは白米を推す。「パンやパスタより脂質が少ないため消化されやすく、運動前に食べても胃腸に負担がかかりにくい」からだ。特におにぎりは携帯に便利で、片手で手軽に食べられ、食べる量も調整しやすい。
米は欧米の選手からも注目されており、試合前後に米料理を提供する海外チームが増えているという。一方で、橋本さんは「ご飯に限らず、何でも食べ過ぎると集中できなくなる」と注意を促す。血液が脳ではなく、消化に使われてしまうからだという。胃腸への負担も大きい。
◆3、4時間前に取って
では、スポーツをする人の補食はいつ、どのくらい食べるといいのだろうか。
橋本さんは、食べてからエネルギーに変わるまでの時間を考慮し、試合の3、4時間前に、体重1キロ当たり糖質1~4グラムを目安に補給するよう指導する。サポートするチームの食事会場には、おにぎりやサンドイッチ、パスタなどに含まれる糖質の量を記した資料を掲示し、参考にしてもらう。
ただ、最適な量は、運動の強度や時間、個々の選手の食べられる量、体調などに応じて異なる。橋本さんは「自分に合った量や食べ方を身に付けている人がトップアスリート」と指摘。目安を参考に、練習試合などの際に試し、最適な量を見つけるのがいいという。
<メモ>令和の米騒動とは…
複数の夕刊紙や週刊誌などによると、中日は昨年8月、試合前の選手の食事会場から炊飯器を撤去。それまでは白米を好きなだけ食べられたが、おにぎりの提供に切り替えたという。「(一部の選手が)米の食べ過ぎで動きが鈍くなった」と考えた立浪和義監督の指示だと報じられた。
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