大阪谷さんは、新卒で家の光協会に就職。編集に関わる一方、週末は大学時代から興味のあった農業や里山活動を学ぶために同市に通う生活を続けた。隣接の館山市にジビエ(野生鳥獣の肉)加工処理施設が完成したのを機に、2022年春に南房総市に移住した。
加工処理に携わる中、野生獣の皮がほとんど廃棄されていることを知った。そこで、皮製品に挑戦しようと東京都内の革小物製作会社で1年以上の研修を積み、24年3月に館山市に工房「伝右衛門製作所」を開業した。
製品は県内で捕獲されたキョン、イノシシ、シカの皮で作る。中でも、特定外来生物で県内に推定8万頭が生息するキョン革は、柔らかく吸水性に優れるため人気が高い。工房の他、オンラインショップでも販売する。
多くの人に獣害対策の課題を知ってもらおうと、地元の高校生や企業のワークショップ体験を受け入れる。
県内の仲間と団体「シシノメラボ」を立ち上げ、環境に配慮した土に還る革を「チバレザー」としてブランド化にも挑戦する。
大阪谷さんは「捕獲した野生獣の肉を食し、革製品を作って地域を学び、その素材を土に還すという地域資源の循環を実現させたい」と先にある里山の維持へ意欲を見せる。
(志水隆治)
