
乳牛230頭、牧場の末っ子 森重選手「銅」

スピードスケート男子500メートルで銅メダルとなった森重選手は、町内の酪農家に生まれた。男6人、女2人の8人きょうだいの末っ子だ。実家は兄・信洋さん(36)が経営する森重ファーム。乳牛総頭数は230頭、搾乳牛130頭。年間の生乳生産量は約1700トンに上る。140ヘクタールの牧草地を管理する。
森重選手は地元の中学校を卒業後、山形県立山形中央高校に進み、現在は専修大学に在学中。銅メダルの快挙に、地元紙が号外を出すほど地域が沸いた。町と酪農にも注目が集まった。
父の誠さん(68)は「日の丸を背にリンクを1周するのはメダリストしかできない。よく頑張った。褒めてやりたい」と語った。
中学生から片道20キロほどある地元のスケートリンクに通った。地元のリンクが使えるまでの11月~12月中旬の間、片道80キロも離れた釧路市のリンクで3年間練習した。平日の夜に週2回、土・日曜日は毎週通った。高校では練習に打ち込み、帰省できるのは、お盆の時期程度だった。
銅メダルを決めた日には森重選手から誠さんに「緊張した」と、電話があった。誠さんは「航は、くそ度胸があるのにオリンピックで怖さを感じていた」と振り返る。
古里が応援、旗手務めた郷選手 きょう1000メートル、雪辱期す新浜選手
古里は、メダルに届かなかった選手も温かく見守る。500メートル女子で15位だった郷亜里砂選手(34)や日本のエース・新浜立也選手(25)も、地域の支えを糧に懸命に練習に励んできた。
郷選手は日本代表団の旗手も務め、五輪は2大会連続で出場した。町内でホテルを経営する父・季良さん(62)によると、郷選手は幼いころから牛乳が大好き。けがにもくじけず五輪代表を勝ち取り、北京で精いっぱい戦う姿を町民が見守ってきた。メダルには届かなかったが、季良さんは「別海の皆さんがとても熱心に応援してくれて感謝しかない。みんなが頑張ってねと言ってくれた。十分満足」と笑顔で話す。
森重選手と新浜選手は、18日の1000メートルにも出場予定。500メートルでは20位だった新浜選手は雪辱を期す。
別海で育った3人が世界に挑む姿は、乳製品の在庫問題や赤潮発生などを抱える町の農家や漁師に元気を与えた。
同町にある野付漁協の楠浩組合長は「3人とも町の誇り。漁業、酪農を核とした小さな町の大きなPRにつながった」と話した。
「母さんも見守っているよ」寄せ書きで激励 JA道東あさひ
森重選手の実家と同じ地区に住むJA道東あさひの原井松純組合長は、酪農家で森重選手と遠戚になる。2019年に森重選手の母が亡くなり、苦労する姿を見てきた。JAは組合員と役職員らで寄せ書きを記すなど応援してきた。原井組合長は「寄せ書きには『森重牧場の末っ子が世界に羽ばたく。お母さんも見守っているから頑張れ』と書いた。活躍がうれしくて涙が流れた。地区70戸の酪農家みんな同じ思い」と喜びを語った。