農地横に鉄塔 農業自動化

岡田さんは2年前から、東京大学や帯広畜産大学、農研機構などとスマート農業の研究を始めた。
村の産業別産出額では、農業が全体の6割を占める。ただ農家1戸当たりの耕作面積は、2019年で50・4ヘクタールと10年前から16%増加。規模拡大で1人当たりの負担が増えていることから、スマート農業への期待は高い。
省力化技術を求める岡田さんはトラクターの無人走行試験で実証農地を提供。研究機関は、電波の届く範囲のデータを収集できるといった利点がある。今後、土壌の水分量や温度などを遠隔監視する技術の確立を目指す。
人材呼び込み雇用創出も
村は18年度から、農水省の事業への参加や東京大学の現地実証に協力。デジタル化を進める動きに興味を持った携帯電話会社が同年、村を視察。誘致の結果、20年3月に岡田さんの農場に5G電波が通った。
22年4月までに3携帯電話会社が村内に電波塔6本を建設。村企画政策課によると、人口当たりのカバー率は7割に上る。村企画政策課は「デジタル人材をさらに呼び込み、地域に雇用を生み出したい」と期待する。
農業以外の分野でも活用が広がる。21年3月には、村内の小学校と国際協力機構(JICA)のラオス事務所をオンラインでつなぎ交流。今年度、自動車会社と自動運転技術の実証試験を予定する。23年度から、生活習慣病の遠隔診療を始める計画だ。
村内には、全国の大学や企業8団体が事務所を構えるようになった。今年4月には、村が設置したサテライトオフィスに東京大学が入居。今後、大手通信会社やデジタル関連企業などの受け入れを予定している。
<ことば> デジタル田園都市国家構想
政府の地方支援策で、デジタルの①基盤整備②人材育成・確保③誰もが恩恵を受けられる取り組み──を進める。地方への人の流れをつくり人口減少・少子高齢化や東京一極集中などの課題解決を目指す。具体的には、デジタルの人材を2026年度末までに230万人育成し、5Gのカバー率を高める。転職を伴わない移住を進めるため、24年度末までに1000自治体でサテライトオフィスなどを設置する方針を盛り込んだ。