アグラボが進める東京都事業 TIB CATAPULT スタートアップ企業との協働事業の創出を目指す



スタートアップと共にイノベーションを巻き起こす

TIB CATAPULTに採択されたSA&Fクラスター


 一般社団法人AgVenture Lab(以下、アグラボ)は、2024年10月に東京都の「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業(TIB CATAPULT)」に採択された。

 TIB CATAPULTとは、世界の課題を解決し、グローバルに活躍するスタートアップの輩出を目指す事業会社などの連携体(クラスター)が、それぞれのビジネスや技術の強みを活かし、スタートアップとの協働を行う事業だ。東京都内の様々なインダストリーやテクノロジーの領域において、クラスターと東京都が協定を締結し、連携・協働を推進する。

 アグラボは、「Sustainable AgriTech & FoodTech クラスター(以下、SA&F クラスター)」の代表事業者としてTIB CATAPULTに採択されている。SA&Fクラスターは、豊かな食産業とそれを支える農畜水産業、そしてこれらの持続的な発展を通して、東京を中心としたサステナブルガストロノミーの実現をはかることとしている。TIB CATAPULTに採択された各クラスターは、3年間で大企業等とスタートアップ企業による20件以上の協働実績の創出を目指す。

サステナブルガストロノミー図解


ことば   サステナブルガストロノミー
 持続可能な食文化を表す言葉で、東京都の持つアセットや日本固有の食文化とも非常に親和性が高い。国連でも推進されており、先進的で今後重要性が増していく新たな食の概念。


未来を変える出会いの創出

SA&Fクラスター マッチングイベントが開催



 2024年12月17日(火)に協働事例創出をはかる催し「SA&Fクラスター マッチングイベント」が東京大手町で開催された。第1回となる本イベントには、協働事業の創出に意欲を傾ける22の企業・団体が参加した。開会のあいさつに登壇したアグラボの荻野浩輝代表理事理事長は、リンゴの木が地上に落ちる様子から偶然にも万有引力の法則を発見したニュートンに言及し、事業も同様に偶然の出会いから始まることが多いと指摘。企業・団体に向けて「皆さんにもさまざまな形のセレンディピティ(偶然の産物)をつかんでいただきたい」と呼びかけた。


アグラボ・荻野理事長
 次いで、農業や地域社会の課題を解決するための「JAアクセラレーター」としてアグラボに選出されたスタートアップ7社が事業提案を開始した。ピッチという短時間で簡潔に提案をする手法が取り入れられ、1社の持ち時間はわずか5分。各社ともに訴求ポイントを端的で明瞭に伝えることに力を尽くした。


ASTRA FOOD PLAN・加納代表
 ASTRA FOOD PLAN株式会社(埼玉県富士見市)は、食品メーカーが排出する野菜の切れ端などを食用パウダーにするという取り組みを説明。同社が開発した“過熱蒸煎機“は、独自の過熱水蒸気技術により野菜の風味を残したまま5~10秒ほどで殺菌・乾燥させられるとのことだ。同社が外食大手の吉野家ホールディングスと共同でタマネギ端材から作り出したパウダーはパンやソーセージに練り込んで風味を持たせる付加価値商品となった。同社の加納千裕代表は「食品ロスといえば食べ残しに注目しがちだが、食品メーカーが排出する野菜の切れ端や、収穫後に切り落とされる葉物の可食部分など、未利用の“隠れフードロス”は年間2000万トン以上といわれる。そこに着目し、ロス解消に取り組んだ」と熱を込めた。「一社でできることは限られているが、他社と協力することでリサイクルフード市場の創設も可能になる」と展望する。


ベンナーズ・井口代表
 持続可能な水産業の実現と魚食普及を目指し、水産物の加工・販売事業や海鮮丼専門の飲食店経営などを行う株式会社ベンナーズ(福岡県福岡市)の井口剛志代表も登壇し、自社工場で製造する冷凍食品の宅配事業“フィシュル”を紹介した。味に問題がなくても規格外などの理由で廃棄されてしまう未利用魚を原料として活用した、完全無添加食品であるのが最大の特徴だ。解凍すればすぐに食べられる加工食品は消費者の人気を呼び、2021年3月のサービス開始以来、月に1万4000人がフィシュルを利用するようになった。井口代表は「漁師さんたちの川上から消費者の川下までをつなぐこのシステムを海外にも普及させたい」と中長期ビジョンを力強く掲げた。

 同社は2023年に第5期JAアクセラレーターに選出されて以来、JA全農インターナショナルを通じて商品をシンガポールに輸出するなど、ビジネスを海外にも広げている。井口代表は「事業に深く関わりのある企業・団体と協働すると計画を早く実現できる」と話す。

 ほかに、植物の乾燥耐性を引き出すバイオスティミュラント資材(アクプランタ・東京都文京区)や、ミカンの皮などが原料の超吸水性ポリマー(EF Polymer・沖縄県国頭郡恩納村)といった、生産に資する干ばつ対策製品にも注目が集まった。

  同イベントに参加したJA全農Aコープ管理部の春田敏尚次長は「これまで漠然としていた各スタートアップの事業イメージを明確に理解できた」と喜び、「食品ロス削減など(フードバリューチェーンの)川下の消費者側における課題解決が命題なので、今後もマッチングイベントに参加し、スタートアップとともに何ができるかを探りたい」と話す。

 アグラボの荻野理事長は「スタートアップの持つ独自性と社会課題へのアプローチに具体的なイメージを持ってもらい、より関心を深めてもらうためにイベントを継続することが大切」とする。アグラボは今後、同イベントを3カ月ごとに開催する予定だ。


イベント後の交流会で語り合う参加者

 アグラボは、JAアクセラレータープログラムの実施主体であり、「食」と「農」と「くらし」にかかわる社会課題を解決するスタートアップを支援しているほか、起業家育成プログラム「GROW& BLOOM」を主導するなど、数多くのスタートアップ企業と深い繋がりがある。なお、2025年1月6日現在でのSA&Fクラスターの構成団体はJA全中、JA全農をはじめ株式会社ニッスイ、国立大学法人東北大学など35団体にのぼる。今回のイベントではこれら構成団体間での交流も随所に見られた。世界でも食のサステナビリティを重視したトレンドが日々勢いを増している。新進気鋭のスタートアップ企業と食農産業に係るイノベーションの創出を目指したい企業や団体は、SA&Fクラスターへの加入を検討してはいかがだろうか?


サステナブルガストロノミーを実現し、食と農の領域を次世代へ

情報webメディア「うけもち」を開設


 アグラボはサステナブルガストロノミーの概念やその実現へ向けた取り組み、スタートアップと企業・団体との協働や連携実績も含めた情報を広く発信・周知し、食と農の領域を次世代へ発展、成長させることを目的とした情報Webメディア「うけもち」を開設。食と農に関わる領域におけるスタートアップと企業・団体との協働、連携事例や、イノベーション創出に向けた協働、連携に取り組むスタートアップ、企業・団体やサステナブルガストロノミーを実践する事例などを紹介していく。

https://ukemochi.agventurelab.or.jp


▢お問い合わせ先
 一般財団法人AgVenture Lab
 info@agventurelab.or.jp


<制作/日本農業新聞 広報局>










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