GI産品でつなぐ、地域と未来

  



地理的表示(GI )保護制度とは、その地域ならではの環境で長年育まれてきた特色ある産品の名称を生産地や生産方法とともに国が登録し、保護する制度です。登録された産品のみがその名称やGIマークを使用できます


https://www.jgic.jp/
TEL:03-5567-1991





販売額7億円を突破/継続的な新規参入


「昭和かすみ草」は、福島県奥会津の昭和村、柳津町、三島町、金山町を中心に栽培される宿根かすみ草だ。小花数が多く、夏場でも花持ちが良い。夏秋期のトップ産地であり、安定した品質に対する市場の評価は高い。


内堀福島県知事㊥に受賞報告に訪れた部会長ら
(福島市で)
産地では近年、慶事が続く。2023年のGI登録を皮切りに、24年には日本農業賞集団組織の部大賞を受賞、続く第63回農林水産祭の園芸部門で最高位となる天皇杯を受賞。本年度の販売額は、部会発足以来の最高額となる7億円を突破した。

現在、「昭和かすみ草」を出荷する部会員は86戸、ハウスの延べ面積は29㌶、平均年齢は56.9歳と働き盛りの壮年層が中核を成す。それを支えるのは、継続的に参入する新規就農者の存在だ。農外からの参入者は、部会員の約3分の1を占め、直近5年の定着率は100%。背景には部会と自治体、JAなどが連携した支援体制がある。

03年から続く昭和村の受け入れ事業では、部会員の農家の下で1年間研修できる。17年には「かすみの学校」として数日間、村での栽培を体験できるインターンシップも始めた。かつての新規就農者が、新たな就農希望者を教える好循環が生まれている。

GI登録日を記念日に/生産者の意識高まる


産地の快進撃の糸口となったGI登録。そのきっかけは、GIサポートデスクからのGI登録を促すはがきだった。トップ産地としてブランド力を高め、輸出での競争力強化にもつながると19年に申請。資料の追加提出などを経て、23年7月20日に登録された。


「昭和かすみ草フェア」の様子(福島県会津若松市で)
これを機に、部会名に「昭和」を付加し、「JA会津よつば昭和かすみ草部会」とした。また登録日の7月20日を日本記念日協会に申請。同日は「昭和かすみ草の日」に制定された。花きのGI登録産品はまだ少ないため、その先駆的産地として記念日制定などにより、花き業界にもGI制度の周知に努める。

合わせて、新規就農者向けの資料にはGIマークを表示。昭和かすみ草が国に認められた産品だと関心を高め、新規就農の増加にもつなげる。

産地ではGI登録のポイントは、日持ち技術や生産者の増加、染めかすみ草の導入などにより、トップ産地の地位を確立したことによると分析。この不断の努力により築かれた品質や社会的評価がGI登録の要件として認められたためと整理する。

JA会津よつば昭和営農経済センターの本名寛之係長は、GI登録後の変化を「生産者の意識が大きく変わった。部会員には40年間培ってきた技術が、やっと国に認められたという思いがある。自信を持って良いものを作り、さらなる品質向上に向けて努力していく姿勢が高まった」と受け止めている。

※写真はいずれもJA会津よつば提供。






GI認定で輸出促進/価格安定に寄与



初せりで30万円をつけた「能登志賀ころ柿」のプレミアム(石川県金沢市で/石川通信部・町出景利提供)
能登半島の中央に位置する志賀地域。100年以上の歴史がある特産品である「能登志賀ころ柿」は、独自品種の「最勝柿」を使い、徹底した手もみ作業と、細かな温度管理で干し上げる伝統的な加工方法により、外観が鮮やかなあめ色で、果肉がようかんのようにきめ細かい干し柿に仕上げる。

産地の再起をめざし/GI登録に挑戦




左上/左 手間と時間をかけて加工する「能登志賀ころ柿」(石川県志賀町で/ 染谷臨太郎撮影)
かつて180人以上いた生産者は、高齢化により減少。また、「能登志賀ころ柿」はお歳暮の贈答目的の購入が多く、年明け頃には値が半減してしまい、出荷後半の価格維持も課題だった。危機感を抱いた産地は、石川県農林総合事務所の指導員からGI制度創設の報を聞き、いち早く登録を模索。2015年に県・町・JA・生産者による「産地再生プロジェクト」を立ち上げ、GI登録を通じてブランド力の強化と高単価販売による生産者の所得増大を目指した。

生産者からは当初、GI登録により一層厳しい規制や生産管理を求められるのではと懸念の声が上がったが、GI制度の「地域の伝統的な産品を保護するための取り組み」という趣旨を伝え、今まで受け継いできたやり方を登録し自分たちの取り組みを〝見える化〟することが重要だと理解してもらった。16年10月、GI制度に登録された

登録後は多くのメディアに取り上げられ知名度の向上につながった。

小さい産地にこそ恩恵/高単価化に寄与



地震で使えなくなった作業小屋(石川県志賀町で)
GI登録以前は、出荷開始時で1㌔当たり平均3,000円ほどだったのが、23年の実績は平均すると3,800円ほどに上昇。課題だったお歳暮需要後の価格も下がることなく維持できるように。さらに台湾や香港向けの輸出の単価は、輸出を始めた当初の17年で1㌔3,100円ほどだったのが、23年実績では5,900円まで上がった。

価格が安定したことで生産者も無理にお歳暮需要に間に合わせず安心して出荷できるようになった。さらに、産地では補助事業を使い包装機などを新たに導入し省力化に努めた。

JA志賀の土田茂樹営農部長は、GI登録のメリットを「GIはわれわれのような小さい産地ほど恩恵を受けやすいと思う」と評価する。

昨年の能登半島地震で加工場が被災した生産者もおり、今の生産者数は98人。しかし、次の収穫までには壊れた加工場を再建させ、生産を再開する人もいる。産地は再び前を向く。







 注意!  地理的表示(GI)の先使用期間が終了します 


GI産品の登録生産者団体に所属していない場合、
商品名などの表示の変更が必要となる可能性があります


GI保護制度においては、登録されたGIについて、生産者団体の構成員以外が生産・製造した産品や、登録された基準を満たさない産品へのGI名称の使用は原則認められません。しかし、GI登録される前からそのGI名称を使用していた者については、他者のGI登録により突然、名称を使用できなくなり不利益を被ることがないよう、一定の条件を満たすと、例外的に名称の使用が認められる、7年間の先使用期間があります。これは、その名称が使用された産品を取り扱う卸売業者、小売業者についても同様です。

上記の7年間の先使用期間は、2019年のGI法改正において、外国との協定を踏まえて規定されたものであり、改正法施行日(19年2月1日)前に登録された71産品の名称については、先使用が認められる期間が、一律、26年1月末までとなります。


現在先使用としてGI名称を使用している方は、26年2月1日から順次、表示の変更や注意書きの表示等の対応を検討いただく必要があります。先使用期間経過後に、そのまま表示を使用しているとGI法違反となるおそれがありますのでご留意ください。農林水産省では、「地理的表示(GI)保護制度における先使用に関する手引き」を公表しています。登録生産者団体の構成員以外でGI登録の日より前からGI名称やこれに似た名称を、農林水産物・加工品などに使用している方は、手引きを参照し、期間満了後にどのような対応が必要かご確認ください。

(農林水産省 輸出・国際局 知的財産課)


先使用に関する最新情報はこちら(農林水産省HP)




<企画・制作/日本農業新聞 広報局>






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