台湾の農產品を友好国 日本へ
中でも、世界各国のパビリオンが並ぶ「海外ナショナルパビリオン」エリアには、各国が国を挙げて人目をひくブースを設営し、自国農産物や加工品をPRした。そのブースの一つである「台湾農業部」は、日本の農水省の役割を持つ。
2018年に台湾の民意教育基金会という団体が行った調査では、台湾人の84.6%が日本に好感を持ち、日本を「友好国」と見ていることが分かった。そんな台湾は、FOODEX JAPANで自国の特徴ある農産物や加工品などを日本のバイヤーや市場関係者に熱心に売り込んだ。
台湾ナショナルパビリオンの運営は、台湾農業部の「台湾農水産物パビリオン」と、日本の経産省にあたる台湾経済部の「台湾食品パビリオン」の二つに分けられる。前者は、台湾農業部が「日本向けに輸出できる能力を充分に備えている」「安全・安心な食品である」と認定した12の企業がそれぞれの特徴のある商品を紹介した。サツマイモやニンジンの加工品といった日本でもなじみのある品もある中、「台湾ならではの食文化」を体現する産品、日本との物理的な近さを生かし物流コスト面でのメリットを見いだす産品に関心が集まった。
ライチに似たフルーツで、日本では漢方としても使用される「竜眼」。台湾では古くから愛され、乾燥させた「竜眼肉」は台湾の伝統食品の一つだ。台湾・台南の陪灶企業社は、樹齢30~40年の竜眼の木から実を収穫。伝統的な「薪焼き法」という技法で5~6日間かけゆっくり乾燥させる。食品添加物を一切使用せず、日本の企業と連携し、ようかんに混ぜ込んだ商品などを展開する。
台湾では「香草蘭」と呼ばれる「バニラ」。洋菓子などの風味付けに欠かせないバニラビーンズは、日本ではほぼ100%を輸入に依存している。主産地はマダガスカルやフィリピン、ウガンダなどの南米地帯だが、北回帰線が通る台湾では、最南端の屏東(ピント)が栽培適性を持つ地域。台湾香草蘭(バニラ)株式会社は、2018年から屏東で栽培を始め、栽培から加工まで一貫して行う。世界中でバニラビーンズの需要が高まるなか、南米諸国と比べ圧倒的に物流コストが抑えられる台湾―日本での商流の拡大に商機を見いだす。
会期2日目には、台湾本国から台湾農業部大臣代理の陳駿季(Junne-Jih-Chen)氏が来日。台湾政府は日本を含む諸外国への台湾産品のPRに国を挙げて注力しており、同氏は各パビリオンを視察し出店企業を激励した。
陳氏は「FOODEX JAPANは全世界3大食品展示会の一つで、台湾でも大変重視している展示会。特に今年はサツマイモ、100年の歴史があるお茶、豚肉加工品がおすすめで、輸出に意欲的な企業を国の代表として選出した。台湾パイナップルも日本への輸出額は、3年前の5,000万台湾ドル(日本円で約2億3,000万円)から6億台湾ドル(日本円で約28億円)と約12倍に伸長しており、今後注目してほしい農産物だ」と力を込めた。
会期3日目の7日(木)には、世界的な青果物加工販売会社のドール(東京都中央区)が1,300㌧の台湾パイナップルを日本への輸出向けに購入したことも発表され、将来的に購買意欲を拡大する機会があるだろう。
代表取締役社長(左)と台湾農業部の范美玲主任秘書
国を挙げて自国の農産物、加工品の輸出に奮起する台湾。パビリオンや各ブースでは、食品だけでなく台湾の伝統的な建築物や文化を体感できるよう工夫されており、官民一体となり食や文化を友好国日本に広めようとする強い思いを見せる。
今後も日本をはじめ世界各国の展示会で、自国産業の発信に力を入れる台湾。熱い台湾から目が離せない。
制作/日本農業新聞広報局