日本農業新聞主催の「第50回読者の写真コンテスト」の年度賞が決まりました。課題写真の部最高位、農水大臣賞に岐阜県高山市の板屋光彦さんの「冬に備えて」。ニュース写真の部最高位の日本農業新聞賞には、和歌山県橋本市の平田敬二さんの「クビアカツヤカミキリ被害拡大」が選ばれました。応募数は課題写真の部に679点、ニュース写真の部に347点の計1026点でした。年度賞の受賞者と作品を紹介します。
課題写真の部
テーマ「私のふるさと」

「冬に備えて」
板屋光彦
岐阜県高山市

この度は、このような大きな賞を頂き誠に有難うございました。連絡を頂いたときは、喜びよりも驚きの気持ちで一杯でした。今回の受賞は、人生初の快挙で最高の栄誉となり、大きな喜びです。
受賞した作品は、岐阜県高山市の観光施設である「飛騨の里」で撮影しました。厳寒地である飛騨地方では、保存食として漬物が不可欠です。そのため、漬物用のハクサイや赤カブを、山間から引いた谷水で洗う「菜洗い」が飛騨地区の風物詩でした。近年ではこの作業があまり見られなくなり、一抹の寂しさを感じています。
撮影をしながら生前の祖母や母の作業の様子を懐かしく思い浮かべました。寒い中、冷たい水で菜洗いをする祖母や母の手が真っ赤になっていたことを覚えています。改めて、家族のために尽くしてくれていたことに感謝しています。
この写真によって、飛騨にゆかりのある方々に、懐かしさを届けられたのではないかと思います。
今後は、この大きな賞を励みに写真撮影を続け、展示会などを通して農業の厳しさの中にある喜びや楽しさ、食のありがたさなどを発信していきたいと考えています。
「茶畑に囲まれて」

白井文枝
京都府福知山市
「放牧の高原」

大塚美代子
静岡市
「早朝」

斉藤延子
香川県観音寺市
「神田で馬の代田かき」

河野サエ子
山口県下関市
「一緒に写そうよ」

達下才子
岩手県奥州市
「春の参道と祭人」

古川佐代美
福岡県北九州市
「里の秋」

千葉守保
岩手県金ケ崎町
「キャベツを抱える」

山崎俊泰
静岡県掛川市
ニュース写真の部

「クビアカツヤカミキリ被害拡大」
平田敬二
和歌山県橋本市

新聞の審査結果を見ると、なんと私の名前が載っているではありませんか。妻と2人で手を叩きながら思わず飛び上がりました。大変光栄なことです。
私は果樹や水田を営む農家です。
数年前から地域では桃などの果樹に、特定外来生物の「クビアカツヤカミキリ」が飛来しています。
今まで丹精込めて育て、やっと販売出来るようになった頃、樹木に寄生し、幹の中を食い荒らし、木をダメにする。そして、他の木に蔓延します。そのため、仕方なく木を根から掘り起こしたり、切ったり、木をネットで覆ったり、対策に大変な苦労をしています。
クビアカツヤカミキリが、発生しなければこんな苦労をしなくてもよいのです。農家は無念の思いで必死に取り組んでいます。
農家の苦労が少しでも分かってもらえたら、早く被害がなくなるよう、祈りつつ撮影しました。
これからも農業を続けながら、農村の良さ、農業の大切さ、農家の人々の思いに寄り添える写真を、撮り続けたいと思います。
「ハウスの倒壊予防」

浅黄健一
山形県河北町
「災禍に勝つ」

石塚佳治
秋田県北秋田市
課題写真の部は、「私のふるさと」がテーマ。地域に受け継がれている農耕儀礼や日常の農作業、移り行く四季の農村風景などを写した作品が寄せられました。
最高位の農水大臣賞に輝いた「冬に備えて」は、昔ながらの農村の風習を色彩豊かに描きました。「寒さ」を感じさせる冷たいトーンでまとめられた画面に、赤カブの鮮やかさが際立ちます。審査会でも色の見せ方に評価が集まりました。
ニュース写真の部は、外来生物や鳥獣被害、気象災害など、農業の厳しい一面を物語る作品が多く寄せられました。最高位の日本農業新聞賞に輝いたのは「クビアカツヤカミキリ被害拡大」です。果樹に壊滅的な被害をもたらす特定外来生物との戦いが、静かな園地に、いくつもの巻きつけられた青い防除ネットという、異様な光景から伝わってきました。